バレンタインとは縁がない(本当はあってほしいけど)、同志よ!
今年はいっそのこと自分で自分にプレゼントしようではないか。
とりあえず1個ぐらい持っているとかっこがつく(ような気がする)。
「でも、やっぱり自分で買うのは抵抗があるなあ……」
そう思っている同志もいるかもしれない。
レジにキレイなお姉さんがいたとしても、
チョコレートでなければ、正々堂々と買えるはずだ。
そうなのだ。
長年、バレンタインとは縁がない人生を歩んできたとしても
世間の目を気にして、コソコソすることはないのだ。
同志よ、立ち上がれ。
お菓子売り場へ行こうではないか。


青森産紅玉というリンゴを使った『りんごのマカロン』(600円)を発見。
東京都国立市にある「焼き菓子工房ポムム」が作っている洋菓子で、
自家製コンフィチュール(ジャム)をアーモンド生地に練りこんで焼いたものだ。

カカオ不使用なので、バレンタインとは無縁な男が、
「自分で買っている」と後ろ指をさされる心配もない。
だから、自分で自分に買っても恥ずかしくないのだ。
小さいリンゴが14個も入っているので、女性にも喜ばれそうだ。
お菓子が見えるように、箱のままリボンをかけてもらうといいだろう。
いつもお世話になっている感謝をこめて、女性に贈ろう。
ときどき、「こませ」をまいて、来年に期待したい。

   

「女性が好きそうなお菓子を自分で買うのも気がひけるなあ……」
たとえチョコレートではないにしても、
〈いかにもなお菓子〉は抵抗があるという人もいるかもしれない。
そんな人には駄菓子の王様『ふ菓子』(315円)という手もある。
高知市にある麸(ふ)の専門メーカー「麸富ヨコヤマ」の製品。

もちろんカカオ不使用。
子どもの頃食べた、素朴な味が懐かしい。
黒糖のほのかな甘みがあり、マシュマロのような風味が愉しめる。
チョコレートなんかよりも、こっちのほうがはるかにおいしい。
もらえないから、ひがんでいるわけではないのだ。

 


「せめてチョコレートをもらった気分だけでも味わいたい」
そんな同志もいるかもしれない。
開き直る覚悟があるのなら、これを買おう。
『ショコラスプーン』(360円)。
北海道にある「ノースファームストック」の製品。

 

写真のプレーン(チョコレート)の他、
ホワイト、ストロベリー、チョコバナナがある。
お湯か、温めた牛乳にショコラスプーンを入れてかき混ぜると、
チョコレート・ドリンクに変身。
お湯よりも牛乳のほうが濃厚で、ココアっぽい風味が愉しめる。
バレンタインとは関係なく、これはこれで十分おいしい。

 

そんなわけでバレンタイン用に自分で選んで買ったわけです。
もちろん、自分のために買うなんて初めて。
ところが、レジにいたのはキレイなお姉さんだった。
「いらっしゃいませ。以上3点のお買い上げですね。
ご自宅用ですか、プレゼント用ですか」
「自宅用のプレゼントなんで包んでください」
思わず小声でつぶやいた。
ああ、恥ずかしい。
 

東京五輪開催前の3歳の時、亀戸天神の側にあった田久保精肉店のコロッケと出会い、食に目覚める。以来コロッケの買い食いに明け暮れる人生を謳歌。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』、『自家菜園のあるレストラン』、『一流シェフの味を10分で作る! 男の料理』などの他、『笠原将弘のおやつまみ』の企画・構成を担当。