1976年以来3年に1度の開催を続け、世界でも類を見ない規模と伝統を誇る催しとして知られる世界バレエフェスティバルの開幕記者会見が、7月30日、まさにその会場となっている東京文化会館大ホールの舞台上で、華々しく行われた。
直前の週末には、フェスティバルの前夜祭ともいわれる全幕特別プロ『ドン・キホーテ』が上演され、いよいよAプロの初日を2日後に控えたタイミングでのこの会見。まずは主催の公益財団法人日本舞台芸術振興会・高橋典夫専務理事と、公演を特別協賛する株式会社コーセーの小林一俊代表取締役社長が登壇。主催者の立場から、また支援する企業の立場から、フェスティバルへのあつい思いを明かした。
近年、テレビでバレエが紹介される機会が増え、「追い風を感じる」と話す高橋専務理事は「42年前に始まったこのフェスティバルが、日本のバレエ界に与えた影響は極めて大きいと自負している」とコメント。また、過去にバレエ公演を支援した実績のある小林社長は「美の創造企業として、ひとりでも多くの方にバレエを観ていただき、心を豊かにしていただけたら」と話すとともに、今回、初の試みとして「コーセー U29シート」と銘打った安価なチケットを販売したことに触れ、「若い方々が本物のバレエを楽しみ、身近に感じていただきたい」と力強く述べた。
会見後半では、Aプロに出演する34人ものダンサーたちが次々と登場。ひとりひとりが各国を代表する一流カンパニーのトップダンサーというだけあって、彼らがずらりと並ぶと、舞台上はえもいわれぬきらびやかな雰囲気に。
最初にマイクを手にしたパリ・オペラ座バレエ団芸術監督、オレリー・デュポンは「7回目の参加ですが、このフェスティバルに参加することは大きな喜び」と満面の笑顔。続いて同団のエトワールたち、またロシア語圏出身のダンサーたち、さらに英国、米国などのカンパニーを中心に活躍するダンサーたちが、皆口々に「ここでの体験はとても貴重」、「いい演技をしたい」とコメントした。今回はフェスティバルの創始者である佐々木忠次が2年前に亡くなってから最初の開催となるだけに、彼を直接知るダンサーたちからは、今回の舞台を「佐々木さんに捧げたい」(アレッサンドラ・フェリ)といった言葉も。
世界の舞台でしのぎを削るライバル同士というよりも、同じ思いで結ばれたファミリーのような温かさを感じさせる彼ら。これも、世界バレエフェスティバルの伝統だろうか。ほかでは得がたい、充実の舞台が期待される。
世界バレエフェスティバルは、Aプロが8月1日(水)から5日(日)まで、Bプロが8日(水)から12日(日)まで、東京・東京文化会館で開催。チケットは発売中。
取材・文:加藤智子