弁護士・理崎智英さんが、離婚にまつわるさまざまなお悩みにお答えします。

今回のご相談者は、妻との離婚に向けて別居を考えていますが、不利にならないよう進めたいと悩んでいます。

<相談内容>
離婚に向けて、まずは別居を考えています。でも、勢いで家を飛び出して不利になるのは避けたいです。お金や子どもの親権で注意すべきことを教えてください。(39歳・男性)

離婚に向けた別居は有効な選択肢の一つです。しかし、一方的に別居すると「同居義務違反」となる可能性があり、場合によっては「悪意の遺棄」に該当します。

悪意の遺棄とは、正当な理由なく配偶者を見捨てることを意味し、離婚請求が認められなくなる恐れがあります。そのため、一方的な別居は控えた方が良いでしょう。

ただし、妻からDVを受けている場合には、迷わず別居してください。

1. 子どもの連れ去りは親権で不利になる恐れ

日常的に子どもの監護をしてこなかった側が、配偶者の承諾なく子どもを連れて別居すると「未成年者略取罪」に該当する恐れがあります。

実際に、別居中の親権者が自らの子を保育園の送迎時に連れ去ったケースで、夫を未成年者略取罪で有罪とした裁判例(最高裁平成17年12月6日判決)もあります。子どもの連れ去りは親権の判断にあたって不利になる恐れがあるので注意してください。

なお、日常的に子どもの監護をしていた側が、相手の合意なく子どもを連れて別居した場合には、未成年者略取罪に問われない傾向にあります。

しかし、未成年者略取罪に問われるか否かにかかわらず、一方の親から子どもを引き離す行為は無用なトラブルを生み、何より子どもに悪影響を及ぼしかねません。感情的になってそのような手段に出ないことが大事です。