総務省によるガイドラインの改正により、2019年9月から大手携帯キャリアの中古スマホの「SIMロック解除の義務化」が実施される予定だ。中古携帯電話の買取・販売業者にとって追い風が吹く一方で、携帯電話市場全体に占める中古市場はまだ3~5%程度。リユースモバイル・ジャパン(RMJ)の代表理事企業を務める、携帯市場の粟津浜一代表取締役CEOが、目前に立ちはだかる大きな壁について語った。
取材・文・写真/細田 立圭志
3大キャリアの選択肢から開放
今まで中古携帯はSIMロックの解除ができなかったので、われわれにとっては千載一遇のチャンスです。中古スマホは、SIMロックの解除と非解除とを比べると、解除されている携帯のほうが高く売れます。お客さまにとっても、高く買い取ってもらえるといったメリットが生まれます。
また、これまでは通信費と端末代は切っても切り離せない間柄にあり、お客さまは3大キャリアという縦軸でしか商品を選択できませんでした。しかし、SIMロックが解除されたら、キャリア別の流通という仕組みが取り払われるので、格安SIMと中古スマホの組み合わせなど、お客さまの選択肢の幅が広がります。
ただ、来年の9月に実施するそうなので、直近のビジネスにすぐに影響を及ぼすわけではありませんが、この追い風にうまく乗って、K点を超えられるかどうかは、われわれ次第だと考えています。1社だけでは非力なので、リユースモバイル通信端末市場の健全な発展と、消費者保護を目的とした安心・安全な流通を促すために17年3月に8社がまとまってできたのがRMJです。今では、賛助会員も含めて16社まで倍増しました。
順調に拡大しています。RMJの正会員企業(9社)で四半期ごとにリリースしているデータでは、18年4月~6月期は約30万台で、合計売上高は約31億円でした。販売台数グラフの推移からは縮小しているように見えますが、これは再販できないリサイクルも含んでいるからです。中古の買取・販売の構成比が増えて、リサイクルが減っているという関係です。お客さまの「格安SIMとセットで使いたい」というニーズから、リユースは順調に伸びています。
総務省が発表した、MVNOが提供する格安SIMの回線契約数は1130万件という数字がある一方で、携帯電話の稼働台数は約1億2000万台です。ですので、SIMフリースマホのシェアはまだ10%程度で、まだまだ発展途上にあると考えています。
「2年縛り」については、基本的に(契約から25カ月目だけではなく)24カ月目の解約料も無料になったというだけの話なので、縛りがなくなったとは考えていません。ですので、この点で(中古携帯市場に)影響を及ぼすとは思いません。4年縛りもauとソフトバンクが止めるといっているので、そこまで影響が出るとは考えていません。ただ、お客さまが永久的に(大手キャリアの契約に)縛られることはなくなると思われるので、少なからず契約形態が開放される点ではいいと思います。
家庭に眠るスマホの方が大きな問題
影響がどれだけ出ているかについて、われわれは正確な数字を持ち合わせていないので何ともいえませんが、MM総研のデータではお客さまは25%しかキャリアの下取りに回していないという実態もあります。つまり、65%がお客さまのご自宅に保管されていて、残り10%がごみ処分やリサイクルなどで処理されています。
われわれはキャリアによる下取りの25%よりも、この65%をどうするかにターゲットを絞らなければいけません。圧倒的に多くの携帯電話は、お客さまの自宅に眠っているのです。総務省の数字でも、中古の携帯市場は全体の3~5%に過ぎない小さな市場とされています。いかに、この65%の台数を、業界を挙げて動かすかが重要です。
RMJの活動や、リユースモバイルについての消費者の認知をもっと向上していく必要があります。実際の中古携帯の仕組みやSIMカードに何が入っていて、どのように入れ替えればいいのかなど、具体的な使い方を含めた認知を上げていかなければいけません。
また、公表はしていませんが、RMJ内でも中古端末をお客さまに安心して使っていただくための独自のガイドラインがあります。これとは別に、総務省の「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」報告書の提言を受け、7月に「リユースモバイル関連ガイドライン検討会」も立ち上げました。
携帯端末登録修理協議会(MRR)という修理団体も加わった検討会で、リユースモバイルの格付け基準や機能・性能の確認方法、個人情報の取り扱いとデータ消去、トレーサビリティー、人材育成などをガイドライン化する活動です。多様で安価な通信サービスが、安心で安全に消費者に提供される社会を形成するという、まさにRMJの理念と合致する活動なので、力を注いでいきます。