キレイにまとまるよりも、ちょっと引っ掛かるところもあったほうがいいかなと

――では、どんな曲を入れたかったんでしょうか?

南波「今、手に入れにくいものを中心にしたかったんです。店舗には売っていないけど面白いものを入れたいとは思いました。レアモノ自慢っていうつもりでは全然なくて、『いい曲なんだからもっと聴かれた方がいいじゃん』っていう単純な思いです。

せっかく曲を作っても、CDの流通のさせ方がわからないような人たちが、アイドル運営をやっていたりすることもある。そうすると、できたCDは手売りするしかないんですよね。あえて手売りにこだわっている場合もあるとは思うんですけど、やっぱり広く聴かれたいと思っているアイドルは多いじゃないですか」

――母数で言うと、どのくらいの曲数から選ばれたんですか?

南波「うーん、4~5000曲はくだらないと思いますよ。ここ3年くらいの曲から集めていって…。収録したくても叶わなかった曲ももちろんたくさんあります。200くらいまで絞って、そこからさらに100になって。最終的に入れられなかった方の100曲を聴くと、それがまためちゃくちゃいいコンピになるんですよ(笑)」

――それはすごい(笑)。そちらも聴いてみたかったです!

南波「最初は『全部でCD7枚かな?』って話になったんですけど、なるべく多くの人に手に取ってほしくて、出来る限り価格を低く設定したかったんですよ。1枚70分越えにすればCD1枚減らせそうだということで6枚になりました」

――では、6枚の各DISCについてお伺いしてもいいですか?

南波「かなりざっくりですがテーマが一応あって、それぞれのミックステープを作るみたいに決めていったんですよね。DISC1は、身も蓋もない言い方をすれば『試聴機対応』です。DISC2は『グルーヴ』で考えました。DISC3は『しっとり』かな?『良いメロディー』っていうのもありますね。

DISC4はそのまま『夏』。曲を集めていったら夏の曲が多かったので、まとめました。DISC5は『変』(笑)。最後のDISC6は、全体的にエンディング感があるというか。『終わり』という感じです」

――各DISCには、そのテーマに収まらない楽曲もありますね。

南波「DISCごとのテーマが前面に出過ぎるのも嫌なんですよね。意味性とか選者のエゴが出過ぎちゃうのも避けたいとも思った。DISC4にも夏曲じゃない曲も入ってるんですよ。もっとテーマ別にはっきり分けることも出来たけれど、そうすると個々の曲よりも、DISC自体が目立ってしまうから、それを避けたくて」

――ただ聴きやすい、というのともまた違うんですね。

南波「キレイにまとまるよりも、聴いている人がちょっとくらい引っ掛かるところもあったほうがいいかなと思ったんです。まぁ、DISC5に関しては、ちょっとどころじゃなく引っ掛かりまくりというか、ここに入れるしかないな…みたいな曲が多いですけど(笑)。でも本当に好きな曲ばっかりです」

――コンピ全体を見回すと、Finolia Factoryの楽曲が多いのが、南波さんのテイストなのかな、とも感じました。

南波「フィノリアは、東京のシーンを語る上で絶対欠かせない存在だと思うんです。あんなにカタログを出していて、歴史も長いのに、どこかミスティックな存在じゃないですか。だから数を絞らないで、いくつか収録したいと思ったんです。本人たちも面白くて、インタビューで好きな音楽を聞いたら、普段から自分たちのレーベルの楽曲を聴いていたりするんですよね」

――おお、なんだかミステリアスですね…!

南波「ただでさえガラパゴスなシーンなのに、その中でもまたガラパゴスみたいな独自の存在ですよね。本当に好きで、正直、フィノリアオンリーのコンピを出したいぐらいなんですよ。次から次にCD-Rでリリースしていて、カタログはずんずん増えていて、どれも謎めいていて、音楽的にも全部面白い…」

 

――自分はこのコンピでフィノリアの「To You」/『first love』を初めて聴いたんですが、ものすごくイイですよね。独特の抒情があるというか…。惜しむらくは、グループ名が一般的過ぎて…。

南波「検索で引っかかりづらいんですよね(笑)。こういう人たちが東京にいること、もっともっと知られていいと思うんですよ。1曲1曲だとわからないかもしれないけど、束で聴いてもらったらわかる良さもあるかなと思って、フィノリアの音源は全部で6曲収録させていただきました」