“アイドルは、どうしてもポップになる”
――もともとこのインタビューは、自分が『JAPAN IDOL FILE2』のラインナップと『RAW LIFE』(注:2004~2006年にかけて行われた伝説の音楽フェス)のラインナップが、なんだか相通ずるものがあるとツイートしたら、南波さんが反応してくださったところから企画されたんですよね。
南波「ええ、そうですね」
――『RAW LIFE』に出演していた人たちも、どこか突き抜けて、自由にやっていた人たちだったと思うんです。それはクラブミュージックであったり、いろいろな音楽のフォーマットだったりして。そのシーンを知っている南波さんだからこそ、出来たコンピなのかな、と思うんです。外からの目線があるから、こうなるのかな、と。
南波「うーん、中も外もわからないですけど、伝統的なアイドルの文脈でコンピレーションを作ったら、こうはならないですよね。『いい曲とされてるもの』以外のもの…そこに自分の好みがあるのも間違いないので」
――それが、このコンピから伝わるんでしょうか。このコンピには、突き抜けたアイドル楽曲が沢山並んでいる。アイドルという形だけど、インディペンデントだからこそのザラっとした肌触りとか、ガリッとした歯ごたえとか、そういうテイストがあると思うんですよ。それは、ジャンルは違えど、『RAW LIFE』に出ていたような人たちと一脈通じている。
南波「ううん、自分も『LOS APSON?』(注:知る人ぞ知るレコードショップ。全世界・全ジャンルから選りすぐった音楽が揃う)でCDやテープを買っていましたからね。そういう部分もあるかもしれないですね」
――アイドルだし、はみ出してるし、飛び出してるものが沢山あるコンピですよね。何度も取り上げますけど、「みかん星☆彡」の『ちょうどイイ♪』なんて、どこからこういう音が出てくるかがわからない(笑)。でも、そこがいい。アイドルという形をとることで、基本的にポップだし。
南波「自分たちで未完成って言ってるぐらいですからね(笑)。基本的にポップにはなりますよね。作り手側が「ポップスを聴かせたい」と思って作っているから、アヴァンギャルドなものじゃないんですよね。アイドルは、どうしてもポップになるんじゃないかな」
――おおお、“アイドルは、どうしてもポップになる”。なるほど…。
南波「そうじゃないですかね? そうじゃないもの、あるのかな…。もんのすごくアヴァンギャルドなことをやっているアイドルがいたら、それも聴いてみたいですけどね。それに、若い女の子が歌っている時点で、聴く側にバイアスがかかるんですよね。能動的に聴いて、ポップなところ、楽しいところを見つけようとするというか。逆にそれがダメな人にとっては、どんなに後ろの音が面白くても、どうしてもダメなのかもしれないけど」
――うーん、ある程度バイアスのかかるフォーマットの中で、これだけ自由なものがあって、その良さをいろんな人に伝える大変さや面白さもありますよね。
南波「だからなるべく価格を安くしたかったんです。だって、もとは1曲1000円の世界ですよ!」
――あ、そうか。単純計算で、100曲で10万円ですね(笑)。さらに、各地で入手するための交通費とかもあるから…。
南波「いくらかかってるんだって話ですよね(笑)。もちろん、大変な思いをして作っている楽曲を収録させていただいたアイドルの皆さんには、本当に感謝しかないし、だからこそもっともっと広がってほしいんです。アイドルを知らない人も、これだけ聴けば絶対面白いことはわかると思うんですよね。シーンの熱は伝わると思うんで」
――その熱を伝えようとする南波さんの熱量と仕事量が、本当にすごい…。このコンピを聴いた方に、現場に来てほしい、と思われたりしますか?
南波「まぁ、現場で楽しむのもすごくいいですけど…それは別にいいかな(笑)。行きたい人が行けばいいし。ただ、やっぱり、熱く支えているお客さんがいなかったら、こんなに広がっていない世界だと思います。もしブームが終わってしまったら、コアだけじゃなくて、ある意味余剰みたいな形で生まれてくるアイドルも減ってしまうし。だから、どうにかいろいろな人に広げていきたいです」
――今日は長時間のインタビュー、本当にありがとうございました。
南波「いえいえ、ありがとうございました!」
いかがだったでしょうか、南波一海氏インタビュー。かなりお忙しいスケジュールの中、長時間のインタビューに応じて下さって感謝! ただ、このインタビューの中で触れられなかった素晴らしい楽曲も沢山あるんです。本来なら全曲レビューと行きたいのですが、さすがに多すぎますので(笑)、各DISCごとに3曲ずつセレクト、YouTube映像と一緒にご紹介していきましょう。