来年迎える結成40周年へのカウントダウンに入った、三宅裕司率いる劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)。1979年の結成以来、怒涛の勢いで公演を積み重ねてきた彼らの、実に56回目を数える本公演「テクニカルハイスクールウォーズ~鉄クズは夜作られる~」が、10月12日(金)に東京・サンシャイン劇場で幕を開ける。劇場入りを前に稽古場で初めて行われた通し稽古を見学した。もちろんセットや衣裳は稽古場仕様だったが、客演なしの劇団員のみで贈る本作に賭ける気合とその面白さを、早くも目の当たりにすることができた。
舞台は東京の下町。不良だらけの定時制工業高校に、ひとりの熱血教師・日立(ひたち)(おおたけこういち)がやってくる。無気力な生徒たちに“ものづくり”の楽しさを教えようと、日立は悪徳校長の妨害にも負けず奮闘する。初めは反発していた生徒たちだったが、工業高校の甲子園というべき「メカコン」への出場を決意。落ちこぼれ集団は、ライバルのエリート校を倒すことができるのか!?
昭和のスポ根ドラマを思わせる、少々クサいがドラマティックで感情移入しやすいストーリー展開。そこにSET自慢の派手な見せ場を配し、老若男女が楽しめるエンターテインメントに仕上がっている。実はもうひとつの顔があった日立を中心とした群舞や、稽古場の床を揺らすほどの激しい格闘シーンは、本番さながらのド迫力。次のシーンに移行しても、袖にハケたキャストたちの「ハァハァ」という息切れの音がしばらく聞こえ、そのハードさを物語る。ちなみに特に気に入ったのは、後半で思わぬ活躍をすることになる演劇部員たちのシーン。滑舌の良さを生かしたとある見せ場は、本番での盛り上がり必至! 観ている側ながら達成感を覚え、稽古場でもつい拍手をしてしまったほどだ。
SETには67歳(三宅)から20歳まで三世代の劇団員が共存しているが、作品を面白くするためにどの世代もイキイキと自分たちの役割を果たし、“劇団力”がみなぎっていた。座長の三宅は校長役で小憎らしいヒールに徹し、看板俳優の小倉久寛はなんと校長と同級生という最年長の生徒役で出演。名コンビのふたりの掛け合いはいわゆる“鉄板”で、若い劇団員たちが熱い眼差しで見つめていた。大団円のフィナーレでもうひと盛り上がりした後、1時間55分で通し稽古は終了。この段階で十分楽しんだが、ここからエンタメ性、劇団力が何倍もパワーアップするはずの本番が楽しみでならない。
公演は10月28日(日)まで。チケットは発売中。
取材・文 武田吏都