高付加価値が魅力の工場野菜ブランド「きらきらベジ」を紹介
工場で育てられた高付加価値の野菜ブランド「きらきらベジ」が注目を集めている。工場野菜といえば無機質と思っている人が多いかもしれないが、昨今は品種が増え、品質も向上したことで、さまざまなニーズに応える存在へと進化している。今回は工場野菜の現在地を探りながら、調理・実食して分かった魅力を解説していく。
採算確保と物流問題が課題の工場野菜
工場野菜の歴史は意外と古く、1985年のつくば科学万博で人工光型モデルが展示され、第一次ブームが巻き起こった。その後、90年代に第2次ブーム、10年代に第3次ブームが起きるものの、そのたびに直面してきたのが採算確保の問題だ。
工場野菜は専用の設備が必要で、維持するには大量の電気を消費するため、利益を確保するのが難しい。通常の露地野菜のように天候に左右されないという大きな魅力があるものの、ビジネスとして成立させるのは非常に困難であり、なかなか市場は拡大しなかった。
だが、10年代後半ごろから運営ノウハウが確立され、市場は拡大へ転じた。
矢野経済研究所が発表している「国内完全人工光型植物工場産レタス類の運営市場規模推移・予測」によると、18年度の生産者出荷金額は59億6900万円だったが、21年度に223億円と約3.7倍に拡大。コロナ禍の内食需要も後押しする形で、市場が形成されていった。
直近では電気代の高騰や物流コストの上昇などで足踏み状態が続いているが、今後は健康志向や食の安全への意識の高まりなどを背景に、市場は再成長に転じると予想されている。また、レタス類だけでなく、多品種の生産拡大が見込まれていることもポジティブなトピックだ。
高付加価値で人気を集める「きらきらベジ」
そんな次世代の工場野菜を象徴する存在なのが、日本山村硝子が展開している「きらきらベジ」だ。同社は創業から100年以上の老舗で、本業はガラスびんなどの容器製造だが、06年に異業種である植物事業参入に向けた研究をスタートした。
本格的な事業開始は14年。採算確保が難しい市場ということもあり、8年かけて研究とノウハウの構築を進めた。その結果、たどりついたのが、競合の少ない「高付加価値の野菜」だ。
21年に日本貨物鉄道株式会社と合弁で、「山村JR貨物きらベジステーション株式会社」を設立し、23年に新たな工場も稼働。スケールを拡大させ、直近では大手スーパーやコンビニ、飲食店、宅食サービスなどに販路を拡大し、楽天などのECサイトの販売も好調だ。
工場野菜は天候に左右されず、年間を通して安定した供給ができるため、特に夏場などは販売店にとって貴重な仕入れ先となる。また、虫の混入や土汚れがなく、農薬も使用しないため、食の安心を重視する消費者にとっても魅力的な選択肢となっている。
光の波長を品種によって最適化。栄養価のコントロールも
同社の高付加価値の野菜とはどのようなものなのか。
具体的には、定番のレタスではなく、ケールや春菊、セロリなどの高い栄養価の野菜を幅広くラインアップしていることが大きな特徴となっている。他社と差別化するための戦略だが、この多品種の育成を可能にしているのが、同社が照明メーカーと共同で開発した高性能LEDだ。
野菜が育つために光が欠かせないのは常識だが、正確にいえば重要なのは「赤色光」と「青色光」だ。赤色光は光合成を促して成長を早める役割を、青色光は徒長を抑えて葉を厚くするなどしっかりとした株を作る(植物の形態を整える)役割を担っている。
きらベジの高性能LEDは、この赤色光と青色光の波長を調整することで、野菜ごとに最適化された栽培環境を実現した。
高性能LEDは栄養価や味のコントロールにも寄与している。例えば、主力のケールは光の波長や栽培環境を細かく調整することで、ビタミンCに特化したもの、ルテインに特化したもの、GABAに特化したものと作り分けることができるので、消費者のニーズにピンポイントで応えることができる。
また、ケールというと「苦さ」が想起される野菜だが、きらきらベジは品種と光の研究を突き詰めることで、苦みを抑えた食べやすい味の野菜の育成にも成功している。現在のメイン顧客は健康志向の強い40~50代というが、味へのこだわりによって、小さい子どもを育てる若いファミリー層にも支持が広がっているそうだ。
ライフスタイルを変える工場野菜のある生活
筆者も試しにきらきらベジの野菜を実食してみた。
味の感想の前に伝えておきたいのが、工場野菜の使い勝手の良さだ。土を使わず、閉鎖されたクリーンな環境で栽培されているため、虫や泥の付着がなく、さっと洗えば生でもすぐに食べることができる。朝の忙しい時間であっても2~3分あれば、サラダとして食卓に並べることができるのは、働く世代にはありがたいポイントだ。
筆者は家でケールを食べることはほとんどないが、きらきらベジのケールは見た目も緑が濃く、みずみずしくハリがあるのが印象的だった。工場野菜というと露地栽培の野菜などと比べて、少し元気がないイメージがあったが、それが古い認識だと実感した。
肝心の味についても、驚かされた。ケール特有の苦みがほとんどなく、むしろ自然な甘さを感じた。噛めば噛むほど、えぐみのないエキスが出てきて、味わい深い。これなら野菜が苦手な人でももりもりと食べることができそうだ。
きらきらベジの代表商品はケールだが、春菊やセロリ、クレソンなど多様な品種がラインアップされている。さっと洗って使えるのはケールと同様。いずれも本来はくせのある野菜だが、きらきらベジの野菜はすっきりとしていて食べやすい。生で食べてもよし、レンジで温めて食べてもよし、さまざまな調理方法を試したくなった。
これで栄養価もしっかり摂取できるのだから、満足感も強い。筆者の朝ごはんは焼いたトーストにはちみつを塗った手抜き料理であることがほとんどだったが、上にケールを乗せるだけでも丁寧な暮らしをしているような気分にさせてくれた。
昨今は天候不順の影響で野菜の価格高騰が深刻な問題になっており、工場野菜がこうした問題を解決する選択肢として有望であることは間違いない。ただ、魅力は生産の安定性だけでなく、野菜の価値を底上げしてライフスタイルに取り入れやすくする可能性ももっている。筆者も実際に口にすることで、古いイメージをアップデートすることができた。(OFFICE BIKKURA・小倉 笑助)
小倉笑助
家電・IT専門メディアで10年以上の編集・記者経験を経て、現在はフリーライターとして幅広い業界で取材活動を行う。家電レビュー、業界のキーマンインタビュー、金融サービスの解説、企業の戦略分析などの記事制作が得意。ポイ活セミナーの講師も務め、生活者に役立つ情報を日々発信している。







