片山友希(左)、MEGUMI (C)エンタメOVO
1970~80年代の静岡を舞台に、激動の時代を生きるシングルマザーが自らの生き方を模索しながら力強く歩んでいく姿を描いた、木村太一監督の『FUJIKO』が全国公開中だ。本作で主人公の富士子を演じた片山友希と、企画・プロデュースを担当し、出演もしたMEGUMIに話を聞いた。
-今回は、企画・プロデュースということですが、そもそものきっかけは?
MEGUMI 木村太一監督の長編第1作の『AFTERGLOWS』(23)に出演した時にすごく仲良くなって、当時はプロデューサー業を始めたばかりだったので、これから一緒に頑張っていこうみたいになりました。それで、この作品の企画を太一さんが持ってきてくれて、「自分の母親の映画を作りたいので、ぜひプロデューサーとして入ってくれませんか」と声を掛けてくれました。私自身は、自分が企画するものに関しては、女性をエンパワーするものと決めていますので、そこにもリンクしていましたし、太一さんは私の中ではもうファミリーなので、いろいろなことが理由となって、今回、プロデューサーとして参加させていただきました。
-片山さんはオーディションで選んだのですか。
MEGUMI われわれの方からお声掛けさせていただきました。共演した時に本当に芸達者な人だと思いました。だから、今回の富士子に対しても、シリアスさだけではないユーモアと強さと、ちょっと素直過ぎる部分をうまく表現してくれるはずだと思い、太一さんも同じ考えだったので、面接という形でお話をさせていただきました。
-それを受けて、片山さんは最初に脚本を読んだ印象はいかがでしたか。
片山 上京当時は、お金がなくて友達もいなくて大変だったけど、何とか生きてこられたし、大丈夫だったよなという気持ちがずっとあったので、それを思い出しました。だから、台本を読んでも全然悲観的ではなかったし、やってやるんだというパワーをすごく感じたので、それは上京当時の自分と重なると思いました。
-演じる上で気を付けたことや心掛けたことはありましたか。
片山 台本が完成するまでの約8カ月間、ずっと改訂するたびに台本をいただいて、富士子のやることなすことが全部理解できたので、役に対するプレッシャーはありませんでしたが、唯一気を付けたのが、一番初めにリリー・フランキーさんと接するシーンでした。富士子は保険の営業で契約をしてほしいという気持ちがあるから、相手のテンションに合わせてお芝居をすることに気を使いました。順撮りではなく、そのシーンは撮影の後半だったので、それまでの富士子のテンションやお芝居は忘れて、リリーさんのお芝居の温度感に合わせようと思いました。
-シングルマザーの役は難しかったですか。
片山 自分は結婚もしていなければ、子どもを産んだこともないので、想像だけでは追いつかないところがありました。だから、現場に入ってから、本当に子どもたちに助けられました。テストや段取りの段階では、ずっと人形を抱いていましたが、本番で実際に赤ちゃんを抱いたら、重さや温度、泣き声などが胸にくるものがありました。子役のオーディションにも参加させてもらいましたが、その時も、恥ずかしがらずにおしゃべりする姿が本当に子どもらしくてかわいくて。彼女の純粋な笑顔や悲しそうな顔からもらえるものがとても多かったです。だから母親役といっても、麻理(娘)役の2人には、助けられたことがたくさんありました。
-MEGUMIさんから見た彼女の演技はいかがでしたか。
MEGUMI 素晴らしかったです。今いろいろな方にこの映画を見ていただいているんですけど、ヨーロッパの方からも日本の方からも、「主演の片山さんが本当にすごいね」という声をたくさんいただいているので、この映画をよくしてくれたことに感謝しています。
-「ロックンロールのような人生」という表現が出てきますが、それがこの映画のテーマの一つでしょうか。
MEGUMI 太一さんが20年間イギリスに住んでいる方で、普段はミュージックビデオを撮っているので、やっぱりこの作品にそれを絡めないわけにはいかないと。彼のアイデンティティーですから。それと、富士子の、転がりながら富士子になっていくみたいなところとロックをリンクさせたところはあります。
-木村監督の演出はいかがでしたか。
片山 監督は「せりふをかんでもいい。飛ばしてもいい。つばが出てもいい。それがリアルだから。オーバーリアクションやお芝居をしているという感じは全部やめてほしい。もっとリアルにしてくれ」と言っていました。リアリティーがほしいというのが大きかったみたいです。
-個性的な共演者がそろっていましたが、特に印象に残った人はいましたか。
片山 イッセー尾形さんは、毎回お芝居するたびに全部せりふが違いました。でも、イッセーさんが台本にはないせりふをおっしゃっても、全然違和感がないんです。それを成立させているのはイッセーさんのキャリアと重みだと感じて、とても勉強になりました。
-完成作を見てどう感じましたか。
片山 例えば、賭博場のシーンは、全部音楽ありきでした。タンタンタンタンって包丁を使うシーン、タバコを吸いながらお札を数えるシーン、焼きそばを作っているシーン、投げた焼きそばをキャッチするシーンは全部リズムでやっているんです。だから、撮影の時は、何をしているのかは分かるけど、どういう音楽が流れてどういう感じになるのかは分からなかったので、完成作を見てすごく面白かったです。それはやっぱり監督がイギリスにずっと住んでいたことが影響しているのかなと。ずっと日本で生まれ育っていたらあまりない感覚だろうなと。日本だったら逆だと思います。お芝居ありきで、後でそれに合う音楽を探す気がします。だから、日本とイギリスがミックスしたような、見たことがないような映画だと思いました。
MEGUMI 4年ぐらい準備してやっとできたので、なかなか感情を抜いて見ることはできません。ただ、1970年代後期という時代背景の中で、こういう親子もの、家族ものを、このテンポ感と音楽で描いた映画は、日本にはあまりないと思ったし、それがわれわれの大きなチャレンジでもあったので、うまくいって本当によかったなと。今はほっとしています。
-最後に、これから映画を見る観客や読者の方に向けて一言ずつお願いします。
片山 とてもかっこよくて面白い映画ができたと思います。正直なところ、心が動く作品に出合えることは限られていると思いますが、この映画は本当に自分の心が動きました。「映画を見てください」と知り合いの人に言うと、「面白いの?」と聞かれることが多いのですが、今回は胸を張って「面白いです」と言えます。私自身、自信を持って面白いですと言える映画と出会えたことをとてもうれしく思います。
MEGUMI 私は自分が企画するものは女性のエンパワーをキーワードに作っていて、本作もその思いを込めて作りました。間違えても失敗しても、とにかく前に進み続けるということはお伝えできたかなと思います。女性ならではの細かい苦しさや、世の中に分かってもらえない悔しさみたいなものも入れ込んだと思うので、そうしたご自身の苦しみをこの映画で浄化して、パワーをもらって、日常に少しでも影響するようなことがあったら大変うれしいです。
(取材・文・写真/田中雄二)







