生成AIを活用した「Bistro アシスタント」
パナソニックは「スチームオーブンレンジ ビストロ」で6月17日から、生成AIを活用した対話型のAI料理パートナー「Bistro アシスタント」の提供を開始した。2025年4月のサービス開始から新たに無料プランを追加。要望が多かった自動調理鍋「オートクッカー」とも連携した。ユーザーがLINEに投稿すると、レシピの提案やアドバイスを受けながら、料理をサポートしてくれる。家事の中でも負担が大きいと感じる料理を、楽しく、モチベーションが上がる体験に変えてくれる。
料理のストレスが減らない三つの原因
パナソニックのスマートライフ事業部 調理機器事業本部の平田順士副本部長は、「ビストロの20年の節目に、新たな価値を提案していく。単に便利な機能を増やすのではなく、料理と向き合う時間そのものの価値を変えていく」と語る。
従来の調理家電は、家事の負担を減らす、調理の時間を短縮する、手間を省くなどにフォーカスして開発してきた。平田副本部長は「今求められているのはその先」とし、「料理を通じて自分らしさを感じたり、家族とつながる時間をつくることが重要ではないかと考える。心が満たされる意味的価値を創出していく」と話す。
共働き世帯が増え、ミールキットや冷凍弁当など便利なサービスも急増している。それにも関わらず、料理が家事の中で最も負担に感じるものになっている。
なぜ料理の負担は減らないのか――。分解すると、三つの原因があるという。まずは、複雑な意思決定。日々の献立に悩んだり、家族の好み、栄養、食材の在庫、時間など、“名もなき家事”として考えなければならないことが多すぎる。手間ではなく、考えることへの「認知負荷」を引き起こしている。
二つ目が、学ぶ・試す機会の減少。核家族化が進み、中食・外食の増加などにより、料理を学ぶ機会が減っている。安心して料理を試せる環境が減ることで、失敗したくないから新しい料理にチャレンジしなくなる。その結果、レパートリーが少なくなり、マンネリ化する。自分のつくる料理に飽きてしまうのだ。
三つ目が、自信と成長実感の枯渇だ。料理をつくっても褒めてもらうことがなく、孤立を感じてしまったり、SNSの普及により他人と比較するケースも増えている。どうしてこんなに上手に作れるのか、自分には時間がなくて無理など、「自分はできていない」という負の感情にとらわれてしまう。「結果的に、料理はやりがいのあるものではなく、孤独な作業になっているのではないか」と分析する。
こうした料理のさまざまな悩みを減らすために開発したのが、生成AIを活用したBistro アシスタントだ。
成功体験が増えると好循環が生まれる
Bistro アシスタントは、調理をLINEで支援する対話型サービスとして25年4月にスタートした。調理中の疑問をLINEに投稿すると、AIチャットが解決策を提案する。家にある食材のレシピを提案したり、完成した料理の写真を投稿すると、モチベーションが上がるような評価をしてくれる。料理中に孤独に陥る心配がない。
献立を考えるストレスから解放され、困ったことがあってもその場で回答してくれる安心が得られる。料理の成功体験が増え、感情的な寄り添いにより自己肯定感が満たされる。「またつくってみたい」と思える好循環が生まれるのだ。
生成AIが登場する前から「実証実験」
パナソニックでは、生成AIが登場する前から、料理の得意なアドバイザーがサポートしながら、料理に対する気持ちの好循環を生み出す実証実験を行ってきた。利用者に寄り添ったレシピやTipsの提案、分からないことがあればLINEでいつでも質問できるなど、個人ごとに対応する内容だ。
実証実験からは、アドバイザーのアドバイスを受ける期間が長くなるほど、利用者が使いこなせていると感じるようになったり、サービスへの満足度が高まることが分かった。ただ、当然だが人数が限られたり、アドバイザーの質のバラつき、教育コスト、対応時間の制約など、人が伴走するにはいくつものハードルがあった。
そんなときに登場したのが生成AIだった。改善のスピードは早く、日々進化していくし、品質にばらつきがなく、24時間365日で時間に縛られない。
なお、Bistro アシスタントは汎用AIではなく、パナソニック独自の生成AIアシスタントだ。60年間のモノづくりによる調理制御技術などハード面と、調理科学の専門家である「Panasonic Cooking @Lab」やコールセンターに集まる顧客の声などソフト面をAIに統合している。
細かいところでいえば、Bistro アシスタントによるLINEの絵文字の使い方ひとつにも、これまでの知見やノウハウが反映されているという。
撮った食材を投稿するだけでレシピを提案
今回のプランの拡充では、新たに無料プラン「BASIC」を加えたのと、月額330円の有料プラン「PREMIUM」に厳選レシピと新機能「食材パシャッとレシピ」「使い切りレシピ」「ぱぱっと副菜レシピ」を追加した。また、要望が多かった自動調理鍋「オートクッカー」でも使えるようにした。
食材パシャッとレシピは、チャットで食材写真(最大3品まで)を投稿すると、AIが画像を認識してレシピを提案する。デモでは、豚肉と玉ねぎ、トマトを撮って投稿したら、「豚のしょうが焼き」が提案された。
レシピに記載している「はちみつ」がなかったときでも安心。はちみつなしでもつくる方法を提案してくれる。子どもの好みも投稿すれば、複数の方法を提案してくれる。
使い切りレシピは、キッチンポケットアプリの食材情報と連携し、チャットにその食材を使ったレシピを提案してくれる。パナソニックのAIカメラ搭載冷蔵庫と連携すれば、冷蔵庫内の食材を活用したレシピを提案してくれる。食材を無駄に購入せず、食品ロスの低減にもつながる機能だ。
ぱぱっと副菜レシピは、メイン料理の調理中に、もう一品である副菜レシピを提案。調理家電を使わない、簡単なレシピを教えてくれるのもうれしい。
最後に、出来上がった料理の写真を投稿すると、Bistro アシスタントが「全体のバランスがとてもいいです」などと褒めてくれる。一人でつくっていると孤独に陥りがちだが、褒めてもらうことで次へのモチベーションにつながる。
生成AIが若年層の日常に急速に浸透していることを考えると、Bistro アシスタントは将来的に有望なサービスに成長することが期待される。レシピや食材の選定、料理の得意、不得意、味付けのセンス、孤独感など、調理家電単独では解決できないソフト面を、Bistro アシスタントが補う。
まさに「伴走」してくれるBistro アシスタントは、料理する人の強い味方になってくれるに違いない。パナソニックは、Bistro アシスタントがBistroファンを増やし、そのつながりを強固にしていく重要なサービスと位置付けている。(BCN・細田 立圭志)







