明治43(1910)年に浅草でオープンした「来々軒」から数え、100余年の歴史を刻んできた日本のラーメン。多様な進化を遂げたラーメン店のいくつかは、いまや欧米はおろか本場の中国・台湾でも「日式拉麺」として人気になっている。そんな国民食のラーメンが、もうひとつの日本のお家芸である漫画と結びつくのは自然な流れ。今回は注目作・定番作を合わせて“必読のラーメン漫画”を紹介させていただきたい。
最新トレンドは「美少女+ラーメン」!
おっさんが飯を食う『孤独のグルメ』から発展し、最近は『ワカコ酒』『幸腹グラフィティ』『くーねるまるた』など“若い女性がひたすら飯を食う”のがグルメ漫画のトレンド。そのラーメン特化型として注目されているのが『ラーメン大好き小泉さん』(鳴見なる/竹書房)だ。
女子高生・悠(ユウ)のクラスに転校してきたミステリアスな美少女・小泉さん。無口で無表情な彼女には“死ぬほどラーメンが好き”という秘密があった。いつも1人でラーメンを食べ歩き、ラーメンを食べている瞬間だけ笑顔になる小泉さん。彼女と仲よくなりたい悠も一緒に行動するうち、ラーメンの魅力に少しずつ触れていく……。
“美少女とラーメン”というシンプルな発想の作品だが連載スタートから人気は高く、初の単行本が発売された時は売り切れる書店が続出。「小泉さん1巻が買えなかった」というファンからの報告がツイッターなどで相次ぎ、ネットニュースで取り上げられるほどだった。
本作がブレイクした秘訣は、読者(とりわけ男性)のツボをことごとく押さえていたことだろう。まず日本人を虜にしてやまないラーメンを題材に取り上げたこと。そして美少女が孤独にラーメンをすするというギャップ。なにより“食べている時の表情が妙に恍惚としていてエロティック”というビジュアル面。そこに女子同士が仲よくする百合要素まで追加しているのだ。ラーメンに例えるならトッピング全部載せの豪華さである。
そんな目をひく要素を満載しながら、実はラーメン描写そのものは意外に濃くてマニアック。大人の事情なのか小泉さんたちが訪れるラーメン屋の看板が見えないことが多々あるが、読む人が読めば「ここは二郎だな」「この独特な内装は一蘭で間違いない」などニヤリとできる。小泉さんが語るラーメンのトリビアも豊富で読みごたえ充分だ。万人にオススメできるという点で、これを超えるラーメン漫画はないと言っていいだろう。