これまで該博な知識と大胆な推理で、日本古代史に新たな地平を切り開いてきた関裕二さんの最新作のテーマはズバリ「天皇とは何か?」です。天皇自身は強い権力を持っているわけではないのに、なぜ皇統はこれまで続いてきたのか。そもそもなぜ強い権力を持っていないのか、どんな形で生まれてきたのか。また、世界の他の王家に比べて、女帝の存在が際立つのはなぜなのか。古代史研究の鬼才が、縄文以来の日本列島人の伝統から説き起こしてこれらの謎を解き明かす新潮新書『古代天皇の正体』(関裕二著)は9月17日の発売です!

本書は「天皇とは何か?」という大きなテーマを、いくつかの視点から解明しようという試みです。
時代で言えば、天皇の誕生から平安末期の院政までの長い期間をカバーします。論点は多岐にわたりますが、ここではそのうちのいくつかをご紹介します。
まず、天皇自身はなぜ強い権力を持っていないのか、そして強い権力を持っていないのに、なぜ皇統がこれまで続いてきたのか、という問題について。この謎は縄文時代からの伝統に踏み込まないと解けません。
かつては、紀元前3世紀に稲作とともにやってきた弥生人が今の日本の基礎を作ったという考えがありましたが、その考えは近年否定されました。稲作が九州北部に伝来したのは紀元前10世紀。その後、時間をかけて全国に広まっていきます。その間、縄文人と弥生人はゆっくりと融合していくわけです。
ここで重要なのは、縄文人のユニークさです。縄文人は世界史的には新石器時代人に属します。新石器時代の人々は、磨製石器を利用して森林を伐採し、農耕を始めます。農耕は財産を生み、その結果強い王が生まれ、文明は発展していきます。ところが縄文人は、この文明に抗いました。稲作の浸透に時間がかかったのは、それを表しています。それは文明化による強い権力の誕生を縄文人が嫌ったのではないか、というのが著者の関裕二さんの推理です。実際、初代とされる神武天皇は強い権力を持っていません。最近「始祖王」として注目されている26代継体天皇も同じ。その後、独裁権力を目指す動きも何度かありましたが、この伝統は続きました。
また、世界の他の王家と比べて女帝の存在が際立つのも謎の一つで、本書では14代仲哀天皇の后、15代応神天皇の母である神功皇后に注目しています。
前述の継体天皇は、25代武烈天皇に子供がなかったために、15代応神天皇の5世の孫として担ぎ出されました。しかし著者の関さんは、『古事記』と『日本書紀』の表記の違いに注目し、継体天皇が後継候補になった真の理由は、神功皇后の末裔だったからではないか、と推理します。そもそもわが国には女性への崇敬の念があり、かつては日本列島の各地に女王が存在しました。神功皇后もその系譜に連なり、のちの国難の時代に推古天皇が即位したのも、その伝統が踏襲されたからというわけです。
このほか本書では、『日本書紀』を妄信することなく、蘇我系や物部系の資料も十分に吟味した上で、次々に大胆な推理を展開します。その結果浮かび上がる、推古天皇、聖徳太子、蘇我入鹿、天武天皇など、様々な重要人物の正体。日本古代史への新たな視点が開けること間違いありません。
中国の皇帝と天皇の違い/考古学が探り当てたヤマト建国の歴史/「前方後方墳」の重要性/邪馬台国論争という“雑音”/圧倒的な東国の人口/東海から朝鮮半島に向かう二つのルート/前方後円墳は地方分権の証/文明に抗った人びと/強い権力者を嫌った縄文人/日本人の信仰の本質とは/多神教と一神教/「文明と野生」の間で揺れ動いた日本人…etc.
第二章 日本書紀は何を隠し、古事記は何を暴いたか
『日本書紀』に残されたヒント/なぜ蘇我氏は大悪人にされたのか/考古学と合致する仲哀天皇の足どり/神功皇后と邪馬台国のただならぬ関係/『日本書紀』の歴史改竄を告発する『古事記』/スネの長い景行天皇=ナガスネビコ/本居宣長の邪馬台国偽僭説/応神天皇の本当の父親は?/三輪山の日向御子の正体/外戚による権力掌握術を編み出したナガスネビコ/実権を取り戻したニギハヤヒ:物部氏の実力…etc.
第三章 危機の時代、なぜ日本人は「女王」を求めたか
卑弥呼から孝謙天皇まで/母系社会は原始的か?/母性に対する崇敬の念/「天皇は国母・神功皇后の末裔」という考え方/「トヨ」でつながる推古天皇と神功皇后/『元興寺伽藍縁起并流記資財帳』に登場する「大々王」/蘇我氏と物部氏の不思議な関係/「鬼前大后」と呼ばれる聖徳太子の母/法隆寺は物部氏の土地に建つ/物部系の歴史書『先代旧事本紀』/ 法興寺を建立した蘇我善徳とは/密かに三つの王家が再統合を企てた?/用明天皇の早世で崩れたバランス/推古天皇誕生の必然…etc.
第四章 古代天皇の正体は何だったのか
三つの王家の血を引く天武天皇/院政とは何だったのか/独裁権力を握った聖武天皇/藤原氏の子がなぜ反藤原に転向?/謀反の濡れ衣で滅亡した長屋王一家/興福寺を抑え込むための東大寺/なぜ聖武天皇は仏教に帰依したのか/道鏡事件は「物部の反乱」/東国を警戒し続けた藤原氏/菅原道真を登用した宇多天皇/院政のカギは「人事権」と「財政」/天皇は神=大自然そのもの…etc.
【著者】関裕二
【発売日】9月17日発売
【造本】新書版
【本体定価】968円(税込)
【ISBN】 978-4-10-611137-2
【URL】https://www.shinchosha.co.jp/book/611137/
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本書は「天皇とは何か?」という大きなテーマを、いくつかの視点から解明しようという試みです。
時代で言えば、天皇の誕生から平安末期の院政までの長い期間をカバーします。論点は多岐にわたりますが、ここではそのうちのいくつかをご紹介します。
まず、天皇自身はなぜ強い権力を持っていないのか、そして強い権力を持っていないのに、なぜ皇統がこれまで続いてきたのか、という問題について。この謎は縄文時代からの伝統に踏み込まないと解けません。
かつては、紀元前3世紀に稲作とともにやってきた弥生人が今の日本の基礎を作ったという考えがありましたが、その考えは近年否定されました。稲作が九州北部に伝来したのは紀元前10世紀。その後、時間をかけて全国に広まっていきます。その間、縄文人と弥生人はゆっくりと融合していくわけです。
ここで重要なのは、縄文人のユニークさです。縄文人は世界史的には新石器時代人に属します。新石器時代の人々は、磨製石器を利用して森林を伐採し、農耕を始めます。農耕は財産を生み、その結果強い王が生まれ、文明は発展していきます。ところが縄文人は、この文明に抗いました。稲作の浸透に時間がかかったのは、それを表しています。それは文明化による強い権力の誕生を縄文人が嫌ったのではないか、というのが著者の関裕二さんの推理です。実際、初代とされる神武天皇は強い権力を持っていません。最近「始祖王」として注目されている26代継体天皇も同じ。その後、独裁権力を目指す動きも何度かありましたが、この伝統は続きました。
また、世界の他の王家と比べて女帝の存在が際立つのも謎の一つで、本書では14代仲哀天皇の后、15代応神天皇の母である神功皇后に注目しています。
前述の継体天皇は、25代武烈天皇に子供がなかったために、15代応神天皇の5世の孫として担ぎ出されました。しかし著者の関さんは、『古事記』と『日本書紀』の表記の違いに注目し、継体天皇が後継候補になった真の理由は、神功皇后の末裔だったからではないか、と推理します。そもそもわが国には女性への崇敬の念があり、かつては日本列島の各地に女王が存在しました。神功皇后もその系譜に連なり、のちの国難の時代に推古天皇が即位したのも、その伝統が踏襲されたからというわけです。
このほか本書では、『日本書紀』を妄信することなく、蘇我系や物部系の資料も十分に吟味した上で、次々に大胆な推理を展開します。その結果浮かび上がる、推古天皇、聖徳太子、蘇我入鹿、天武天皇など、様々な重要人物の正体。日本古代史への新たな視点が開けること間違いありません。
■目次
第一章 天皇は権力者か、権威の象徴か中国の皇帝と天皇の違い/考古学が探り当てたヤマト建国の歴史/「前方後方墳」の重要性/邪馬台国論争という“雑音”/圧倒的な東国の人口/東海から朝鮮半島に向かう二つのルート/前方後円墳は地方分権の証/文明に抗った人びと/強い権力者を嫌った縄文人/日本人の信仰の本質とは/多神教と一神教/「文明と野生」の間で揺れ動いた日本人…etc.
第二章 日本書紀は何を隠し、古事記は何を暴いたか
『日本書紀』に残されたヒント/なぜ蘇我氏は大悪人にされたのか/考古学と合致する仲哀天皇の足どり/神功皇后と邪馬台国のただならぬ関係/『日本書紀』の歴史改竄を告発する『古事記』/スネの長い景行天皇=ナガスネビコ/本居宣長の邪馬台国偽僭説/応神天皇の本当の父親は?/三輪山の日向御子の正体/外戚による権力掌握術を編み出したナガスネビコ/実権を取り戻したニギハヤヒ:物部氏の実力…etc.
第三章 危機の時代、なぜ日本人は「女王」を求めたか
卑弥呼から孝謙天皇まで/母系社会は原始的か?/母性に対する崇敬の念/「天皇は国母・神功皇后の末裔」という考え方/「トヨ」でつながる推古天皇と神功皇后/『元興寺伽藍縁起并流記資財帳』に登場する「大々王」/蘇我氏と物部氏の不思議な関係/「鬼前大后」と呼ばれる聖徳太子の母/法隆寺は物部氏の土地に建つ/物部系の歴史書『先代旧事本紀』/ 法興寺を建立した蘇我善徳とは/密かに三つの王家が再統合を企てた?/用明天皇の早世で崩れたバランス/推古天皇誕生の必然…etc.
第四章 古代天皇の正体は何だったのか
三つの王家の血を引く天武天皇/院政とは何だったのか/独裁権力を握った聖武天皇/藤原氏の子がなぜ反藤原に転向?/謀反の濡れ衣で滅亡した長屋王一家/興福寺を抑え込むための東大寺/なぜ聖武天皇は仏教に帰依したのか/道鏡事件は「物部の反乱」/東国を警戒し続けた藤原氏/菅原道真を登用した宇多天皇/院政のカギは「人事権」と「財政」/天皇は神=大自然そのもの…etc.
■内容紹介
天皇とは何か? 近年、皇室への関心が高まっているが、この根本的な問いに対する答えはいまだ定まらない。そもそも皇祖はいかにして生まれたのか。古来、政治権力と表裏一体でありながらも、連綿として特別な権威をまとい続けているのはなぜなのか。また、世界の王家と比べて女帝の存在が際立つ理由とは――。それらの謎を解くために、古代へと遡ろう。古代史研究の鬼才が放つ、渾身の天皇論!■著者紹介:関裕二(せき・ゆうじ)
1959(昭和34)年、千葉県柏市生まれ。歴史作家、武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー。仏教美術に魅了されて奈良に通いつめ、独学で古代史を学ぶ。『藤原氏の正体』『蘇我氏の正体』『神武天皇vs.卑弥呼』『古代史の正体』『スサノヲの正体』『アマテラスの正体』など著書多数。■書籍データ
【タイトル】古代天皇の正体【著者】関裕二
【発売日】9月17日発売
【造本】新書版
【本体定価】968円(税込)
【ISBN】 978-4-10-611137-2
【URL】https://www.shinchosha.co.jp/book/611137/
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