佐野大樹、森山栄治、鷲尾昇、土屋裕一の4人からなる演劇ユニット*pnish*(パニッシュ)が3年半ぶりに放つ本公演は、舞台版『魔王 JUVENILE REMIX』。伊坂幸太郎の小説を大須賀めぐみが大胆にコミカライズした物語を舞台化、演出の鈴木勝秀が脚本も手がける。公演初日まで1か月をきった某日稽古場を取材、キャストの話を聞いた。
*pnish* vol.14 舞台版『魔王 JUVENILE REMIX』チケット情報
登場するのは謎の死を遂げた兄・安藤とその理由を追う弟・潤也。自警団を名乗る「グラスホッパー」率いるカリスマ・犬養や暗躍する殺し屋たち―――ユニットメンバーが演じるのは、潤也を巡るさまざまな立場の大人たちだ。「伊坂さんの小説をずっと演りたかったので、今回、実現してうれしいです。僕は蝉(せみ)という殺し屋の役で、殺すことが仕事なので『普通』ではない気配を出したい。ただ、どちらかというと普段はいじめられっ子タイプなので、怖い目線やキリッとした態度とかが難しくて……」(佐野)。「いや、絶対にいじめられっ子じゃないからね!(一同笑い)僕が演じるのは最高峰の殺し屋、槿(あさがお)です。最高峰ということを意識して人格も、どこか浮世離れした空気を湛えることができたらと心がけています」(森山)。「この国を変えようとする政治家の犬養舜二を演じています。とてつもないカリスマ性を持ち、恐ろしく長い演説の台詞があって大変ですが、今の僕だからこそ挑める役だと感じていて、ものすごく楽しんでいます」(土屋)。「僕は緒方という犬養を守る立場で、真っ直ぐゆえに悩み苦しむ役ですが、犬養のパワーに負けてないよう、揺らがない己を表現したいです」(鷲尾)
静謐かつスタイリッシュ、緻密な鈴木勝秀の演出は彼らに新たな風を吹き込んでいる。
「スズカツさんにお願いしたいと言い出したのは僕です。これまでの*pnish*とはちがった経験ができるかもしれないと思ってのことでしたが、実際に稽古場がとてもクリエイティヴで演劇的で、すごく新鮮です」(土屋)。「僕ら4人だとつい遊んでしまいがちで、それが悪いとは思わないけれど、スズカツさんの稽古は一回、一回がものすごく濃密ですごくドキドキする。この緊張感はとても好き」(森山)。「僕らを細かく見てくれて、ていねいに組み立てていくので、ああ、芝居ってこうやって創るもんだったな、と改めて思える時間を過ごしています。原作を好きな方、漫画を好きな方、どの方向からでも楽しめる舞台になっているので楽しみにしていてください」(鷲尾)。「30代後半を迎え、自分でも変わってきたなと思えるこの年でスズカツさんと出会えたことはとてもうれしくて楽しい。すごくカッコイイ舞台になっていると感じているので観てほしいです!」(佐野)。「舞台は生もので、その日、その瞬間しか観ることができません。だからこそ一回を大切に全力に、今しかできない舞台を届けます」(土屋)
公演は4月18日(土)から東京・AiiA 2.5 Theater Tokyo、5月1日(金)から兵庫・新神戸オリエンタル劇場にて。
取材・文:おーちようこ