~古民家の再生と新築木造商業施設の一体整備による新たな交流拠点が誕生~

東急株式会社(以下、東急)、住友林業株式会社(以下、住友林業)、株式会社再生建築研究所(以下、再生建築研究所)が手掛ける商業施設「新綱島MICCA(ミッカ)」(以下、本施設)は、池谷家住宅主屋(以下、古民家)の改修工事が2026年9月30日(水)、新築木造商業施設が10月1日(木)に竣工し、本日10月28日(水)に開業しました。

本施設は、1857年(安政4年)創建の古民家と、2棟の新築木造商業施設が並ぶ計3棟で構成される商業施設です。「新綱島MICCA」という名称には、「れきし」と「くらし」が重なって、愛着とつながりを育むみんなの家となり、みんなでシェアする果実となって欲しいという想いが込められています。東急は事業コンサルタントとして事業全体の企画・推進を担当し、住友林業は木造商業施設の設計・施工、再生建築研究所は敷地全体のマスタープラン・デザイン監修および古民家の設計監理を担いました。

鶴見川とともに発展してきた綱島は、1926年の鉄道開通や2023年の新綱島駅開業など、都市基盤の整備とともに姿を変えてきました。本施設は、古民家(以下、「OMOYA」)と新築木造商業施設(以下、「HANARE 南」「HANARE 北」)を一体的に捉え、「都市にエッジをつくらない」ことを設計思想としました。駅前の高層建築物と古民家の間に低層木造商業施設を新築し、都市の新旧を段階的につなぐ建物の配置・スケールの連続性を重視。古民家の深い軒下や縁側がつくる、内と外の間の居場所を新築棟にも広げる計画とし、駅前から古民家、庭、広場、木造商業施設へと自然に巡る「8の字」の回遊動線を計画しました。

              築170年の古民家を再生した「OMOYA」 撮影:楠瀬友将

「OMOYA」は、広い土間や庭につながる縁側など、かつての暮らしを伝える空間構成を残し、時代に合わせて改修を重ねてきた建物です。今回も改修履歴を丁寧に調査し、残すものと更新するものを見極めて設計。創建時からあまり手を加えられていない南・東・西の外観や平面構成、庭と一体となった縁側の風景を継承しつつ、耐震性能や設備を更新。かつて裏側だった北側を新綱島駅から人々を迎える新たな顔へと転換し、飲食店舗として再生しました。この考え方は池谷家で代々接ぎ木により受け継がれてきた桃の木のように、古民家から新築木造商業施設、駅前の街並みへとつながっていきます。

「HANARE南」、「HANARE北」(以下、建物)は、住友林業が設計・施工を手掛けた純木造2階建ての低層商業施設です。建物は古民家の伝統的建築の要素や低層のたたずまいを継承し、深い軒下空間と連続する木の柱によって、内外を繋ぐ「縁側」のような空間を演出しました。内外装に木材を多く使用し、外部の構造柱を現しとすることで、木の風合いや温かみを感じられる親しみやすい街並みを形成しました。また、駅からの人の流れを受け止める開かれた配置計画とすることで、古民家や庭、周辺広場との回遊性を高め、交流を生み出す空間を実現しました。

                  純木造2階建て低層商業施設「HANARE南」

構造面では高耐力な合板耐力壁を採用し、木造でありながら店舗に求められる大開口と高い空間自由度を実現しました。耐力壁に建物の力を効率よく集約し、壁の量を抑えながら広い開口部や柔軟なテナント計画に対応。さらに耐力壁上部に非耐力壁スペースを設け、設備配管・配線のための開口も確保しました。流通材と既製金物を活用した合理的な構造計画により、コストや施工性にも配慮しています。

「One Click LCA」※1による算定では同規模の鉄骨造の建物と比較し原材料調達から解体時までのCO2排出量である「エンボディドカーボン」を約34%削減しました。また構造材や仕上げ材、合板を含め建物全体で約829.1m3の木材を使用し、約703.31t(CO2ベース)の炭素を固定しています。「エンボディドカーボン」が少なく、木材の炭素固定機能により脱炭素に寄与する環境配慮型の建物です。

不燃材を使用した2階屋外通路の天井材を除くすべての外装木部に、木材保護塗料「S-100」のプレミアム仕様(3回塗り)を採用しました。さらに、構造材を現しとした正面ファサードの木柱には、AZN処理とS-100を組み合わせた「SUSTIMBER(サスティンバー)」※2仕様を採用し、耐久性をより高めています。木材本来の風合いを活かしながら高い耐候性・耐久性を確保し、メンテナンスサイクルの長期化を図り、古民家と調和した温かみのある景観を形成します。

なお、施設の開業を記念し、住友林業は施設の魅力向上と地域景観の創出への貢献を目的に枝垂れ桜「太閤千代しだれ(R)」を寄贈しました。住友林業は京都・醍醐寺の「太閤しだれ桜」の後継樹育成に取り組み、2004年に世界で初めて組織培養によるシダレザクラのクローン増殖に成功しており、「太閤千代しだれ(R)」はその技術によって育成した後継樹です。本樹木は、春には優美な花姿を楽しむことができ、地域に親しまれる景観資源として施設周辺の環境価値向上に寄与するとともに、街を訪れた人や地域住民に潤いを提供し、まちの賑わい創出の一助となることを期待しています。

「SUSTIMBER」仕様の建物の正面ファサードの木

   「太閤しだれ桜」の後継樹「太閤千代しだれ(R)」

本施設は、歴史的資産を保存・活用するとともに、多くの人々が日常の中でこの土地の歴史や文化を身近に感じられる場を創出することを目指しています。綱島の歴史を受け継ぎながら、人々の愛着を育み、地域のにぎわい創出と活性化に貢献する新たな交流拠点として、まちの魅力向上に取り組んでいきます。

※1.建設にかかる原材料調達から加工、輸送、建設、改修、廃棄時のCO2排出量等を効率的に算定できるソフトウェア
参考URL:https://sfc.jp/treecycle/value/oneclicklca/
※2.化粧仕上げのスギ材に、木材の耐候性を確保する保護塗料を施し建物外観の美しさを長期間保つ外装化粧部材。AZN処理で木材を長期利用するための防腐・防蟻処理。シロアリや腐朽菌による劣化を抑え、建物の耐久性を向上。木目を活かす半透明の木材保護塗料「S-100」で高い撥水性と潤滑性による防汚性を発揮。木の風合いを保ちつつ、紫外線による灰色化を抑制し木材内部への水の侵入を軽減。塗装のメンテナンス頻度は標準仕様で5~10年、プレミアム仕様は12~13年程度としメンテナンス性を向上。

■施設概要
施設名称  新綱島MICCA
所在地 OMOYA 神奈川県横浜市港北区綱島東一丁目8番29号
       HANARE南 神奈川県横浜市港北区綱島東一丁目8番37号
HANARE北 神奈川県横浜市港北区綱島東一丁目8番7号
敷地面積  約6,659平方メートル
延床面積  OMOYA 約348平方メートル
HANARE南 約1,394平方メートル
HANARE北 約1,209平方メートル
構  造  OMOYA 木造平屋
HANARE南、HANARE北 木造2階建て(木造軸組工法)/ 45分準耐火構造
用 途  飲食店舗、物販店舗、事務所等

■これまでの経緯
2024年1月  古民家 横浜市認定歴史的建造物に認定
2024年11月  古民家 横浜市特定景観形成歴史的建造物に指定
2025年2月  古民家 改修工事着工
2025年5月  木造商業施設着工
2026年9月  古民家 改修工事竣工
2026年10月   木造商業施設 竣工、本施設 開業

■横浜市認定歴史的建造物とは
横浜市では、1988年に「歴史を生かしたまちづくり要綱」を施行し、横浜らしい個性と魅力あふれる都市景観を形成している歴史的建造物の保全・活用をすすめています。横浜の特色をつくりだしている歴史的な建造物の保全と活用により、魅力的で快適なまちづくりを行うことを目的とし、社寺、古民家、近代建築、西洋館、近代和風建築、土木産業遺構及びこれらと一体となっている工作物等を対象としています。

■横浜市特定景観形成歴史的建造物とは
歴史的な価値を有する建造物であって、魅力ある都市景観の創造を推進する上で特に重要なものを特定景観形成歴史的建造物として指定することができます。また、指定した建造物について所有者と協議のうえ保存および活用の促進に関する計画(保存活用計画)を策定します。これらの指定及び保存活用計画の策定にあたっては横浜市都市美対策審議会の意見を聴取します。特定景観形成歴史的建造物の指定を受けることで、建築基準法第3条第1項第3号の規定を適用し、建築基準法の適用を除外することで、歴史的建造物の保全と利活用を推進します。 この制度を活用することで、歴史的景観の魅力を生かして、文化・観光施設や飲食店など都市の魅力向上や活力創出に資する施設への利活用が可能となります。

■本施設の特徴
【歴史的資産の継承】
・安政4(1857)年の創建以降受け継がれてきた、古民家や庭に残る綱島ならではの景観的・歴史的価値を有する資源を将来に向けて継承し、綱島らしい歴史を感じられるまちづくりに寄与します。
・古民家は、景観的・歴史的価値を損なわない活用を図るとともに、安全性を担保し、来訪者が利用できる収益用途とすることで、将来に向けてより多くの来訪者へ歴史的資産を普及します。
【地域の憩いの場や賑わい創出】
・古民家や庭という地域資源を保全しつつ、地域の憩いの場を創出します。
・古民家を囲うように低層商業施設を配棟し、道路に対して店舗の顔をつくることで、新綱島駅周辺の他施設との調和を図り、賑わいを形成します。
・来訪者が古民家と低層商業施設の空間を自由に行き来できるような動線とし、回遊性を向上します。
【古民家と調和した木造商業施設】
・古民家とスケール感をあわせた2階建ての低層とし、古民家と調和した深い軒下空間や連続する木の柱など伝統的建築要素を設計に取り入れた木造建築とします。
・1階は店舗の前に商品やベンチ等を配置することのできるスペースを設け、建物内外を融合させる縁側のような空間を演出しています。 
・内外装に木材を多く使用し、外部構造柱を露出させることで自然の温かみと木の風合いを感じられ、古民家と調和した親しみやすい街並みを形成します。

■会社概要
東急株式会社
会社名   :東急株式会社
代表取締役 :堀江 正博
所在地   :東京都渋谷区南平台町5番6号
設立    :1922年9月2日
事業内容  :不動産賃貸業、不動産販売業、その他事業
URL   :https://www.tokyu.co.jp/
東急株式会社は、東急線沿線を中心に、長期視点での「まちづくり」を手掛け、お客さまの生活に密着したさまざまな事業を展開していますが、その一つとしてこれまで培ってきたまちづくりのノウハウや東急グループのネットワークを生かし、不動産ソリューション事業(コンサルティング、売買仲介、買取再販、住まいと暮らしのコンシェルジュ、アパートメントホテル)を展開しています。少子化、高齢化、空き家の増加、ライフスタイルの多様化など、時代の環境変化に応じた幅広い不動産ソリューションメニューを提案し、沿線人口の流入促進・流出抑制、また地域の不動産ストック再生に取り組むことで、社会課題を解決する持続可能なまちづくりに寄与していきます。

住友林業株式会社
会社名  :住友林業株式会社
代表取締役:光吉 敏郎
所在地 :東京都千代田区大手町一丁目3番2号 
設立 :1948年2月20日
事業内容 :木材建材事業、住宅事業、建築・不動産事業、資源環境事業、その他事業
URL  :https://sfc.jp/
住友林業グループは森林経営から木材建材の製造・流通、戸建住宅・中大規模木造建築の請負や不動産開発、木質バイオマス発電まで「木」を軸とした事業をグローバルに展開しています。2030年までの長期ビジョン「Mission TREEING 2030」では住友林業のバリューチェーン「ウッドサイクル」を回すことで、森林のCO2吸収量を増やし、木造建築の普及で炭素を長期にわたり固定し、社会全体の脱炭素に貢献することを目指しています。今後も非住宅建築分野での木造化・木質化を推進し、木の魅力を最大限に生かした付加価値の高い商品・サービスを提供していきます。

株式会社再生建築研究所
会社名   :株式会社再生建築研究所
代表取締役 :神本 豊秋
所在地   :東京都渋谷区神宮前4-9-13ミナガワビレッジI
設立 :2015年12月1日
事業内容 :建築物の調査(構造や環境解析等)・企画・設計監理・管理に及ぶ再活用コンサルティング全般、再生に関する研究
URL   :https://www.saiseikenchiku.co.jp/
建築の不可能を可能にして、100年前の資産で、100年先をつくる。再生建築研究所は、既存ストックを社会の資産として捉え、建築・不動産・金融・文化・都市の領域を横断し、新築だけでは生み出せない価値を創造する建築設計・研究組織です。老朽化や法制度、事業性などの課題に対し、調査・企画・設計・適法化・事業構想を一体的に検討。既存建築の潜在的な価値を引き出し、次の時代へとつなぎます。さらに、歴史的建造物や既存ストックを核に、建築・公共空間などのハードと、事業・運営・地域経済を育む仕組みなどのソフトを一体的に構想する「再生型開発」へと展開。建築単体からエリア全体のマスタープランまで、100年先を見据えた都市のあり方を実践しています。
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