このコラムをお読みになっているあなた。
あなたはもう大人ですか?
今日は、大人の文房具のお話なので大人になっていないと、
ピンとこないことも混ざっているかもしれません。

さて、「これは大人の文房具だな」と思われるものにはどんなものがあるでしょう?
諸説ありますが、
ここでとりあげてみるのは“紙を綴じるための小さい方の文房具”です。
なんだい、一言にまとまらんのか。
おっしゃる通りなんですが、
そこは、大人の事情で1アイテムに絞りきれないのでお察しください。

具体的にどんなものか、と言うとクリップ、とか、ステープラー、綴り紐、などのことをさしています。
とりあえずここではクリップ系、と呼ぶことにしましょう。
ちなみにファイルやクリアホルダーを紙を綴じるための大きい方の文房具と捉えております。
クリップ系がなぜ大人の文房具なのか。

では、大人のみなさん、記憶を辿って、思い起こしてみましょう。
小学校の頃の宿題、またはお知らせ。これはどんな形態で配布されましたか?
紙単体、もしくは冊子の状態ですよね。
クリップどめ、は、ほとんどなかったはずです。
ステープラーどめ、も相当少ないでしょう。
つまり小さな器具で仮にまとめた書類は子供にはまだ早い、ということです。
自分の意志で数枚から数十枚の紙をまとめる、という行為の多くは
大学生以降、頻繁に行われるのは社会に出て以降、と考察されます。

そんな大人のニーズに応えて、今日までさまざまな
クリップ系文房具が開発されてきました。
著しく機能開発されたのはステープラー部門でしょう。

金属針を使わずに紙をとじることができるハリナックスは
ゴミ分類での悩みを一挙に解決。
2枚という少量から40枚という大量枚数をかるーい力でとじるバイモ、
普通のホッチキスで製本を可能にする補助器具ナカトジール、など、
開発チームの“どや顔”が目に浮かぶ名作が文具売場のいたるところでみることができます。

そんな中、クリップという針金を曲げた単純構造の留め具は
「形状を楽しむ」という別方向の発展をとげました。
本来の紙をとめる、という機能をほどほど満たし、
見た目の楽しさで紙にアクセントや個性を加味するという
大人技のための小道具として発達した、といったところでしょう。

代表的なものは動物をかたどったディークリップス。
サイン図形や記号のピクトメが活躍しております。
また輸入クリップでは、カラフルに展開しているものもあります。


かわいいクリップ群。


大人向け。

さて、今回の「だから私はこれを買いました」は、スマイルガチャック。
専用の本体を使って紙をとじる、ステープラータイプのとじ具ガチャックの新しいシリーズです。
玉が繰り返し使えることと、
スマートに80枚くらいの大容量枚数をとめることができる便利なガチャックですが、
その玉を型抜きすることによって愛嬌のある表情がつきました。


よろしくね、な感じ。

いきすぎないお茶目さが、重苦しい書類を軽やかにまとめてくれる。
そんな心配りや、それを受け止める寛容さも
大人度をはかるひとつのバロメーターになるのではないでしょうか。
さあ、今年も新しい大人たちが社会に羽ばたいていく季節になりました。
大人として「紙をとじる」行為に向き合ってみてください。 

 

ういの・きょうこ 東京小猫商会:文具部2号、コモノ部4号。ボールペンとえんぴつの店&BraveBrownBag輸入総代理店:銀座『五十音』店主。嗜好性の高い文房具の販売や、日本全国の作家との交流を生かした製品プロデュースを手掛ける。全日空機内誌『翼の王国』コラム:『筆記交々』を2年間連載。著書『ボールペンとえんぴつのこと』(木楽舎)。公式サイト