今年1月に上演され、大好評のうちに幕を閉じた『ヴァンパイア騎士』が、7月1日、東京・あうるすぽっとにて待望の再演初日を迎えた。樋野まつりの妖しくも美しい原作コミックの世界観を、ドラマチックな楽曲とスピーディーな展開とで見事に立体化した本作。メインキャストを務める若月佑美(乃木坂46)と、男装モデルとしてカリスマ的な人気を誇るAKIRAとルウトらの熱演もあり、満員御礼となった初演の濃密度を、そのまま引き継いだ舞台となっている。
一般生徒が通う普通科(デイ・クラス)と、美形エリート集団が所属する夜間部(ナイト・クラス)がある名門・黒主学園。実は、玖蘭枢(AKIRA)率いるナイト・クラスの生徒は吸血鬼なのだが、そのことは理事長の黒主灰閻(柿丸美智恵)の養女・黒主優姫(若月)と、幼なじみの錐生零(ルウト)しか知らない。ふたりは風紀委員という名目で、“守護係(ガーディアン)”として学園の秘密を守っていた。そんなある日、ナイト・クラスに新入生の紅まり亜(荻野可鈴〔夢みるアドレセンス〕)がやってくる。彼女の行動から、純血種の吸血鬼・緋桜閑(渡辺舞)に関わる零の過去が明らかになり……。
乃木坂46での活動の他、女優業にも積極的に挑んでいる若月は、枢に見守られるヒロインでありながらも、零のために時に凛として吸血鬼に立ち向かう優姫を演じ分けて好演。アクションシーンをキビキビとこなす一方で、枢への憧れを浮かべる表情が可愛らしい。そんな彼女を囲むAKIRAとルウトも、芝居はもちろん、歌、ダンス共にしっかりと魅せる。原作コミックのキャラクターをもとに、血の通った人間像を作り上げ演じること、また静止画であるモデルとは異なり、動きのひとつひとつを見られる役者として舞台に立つこと。AKIRAもルウトも、これまでいくつかの舞台を経験しているとはいえ、この高い壁に挑戦し、きちんとクリアしている点に驚いた。中でもAKIRAの歌と、ルウトの芝居心がいい。後半になるにつれ、次第に舞台に引き込まれていった。
ナイト・クラスの生徒は他に、喜屋武ちあき(藍堂英役)、天翔りいら(一条拓麻役)、綾那(架院暁役)、松本愛(支葵千里役)。男役での芝居は難役と思われるが、さすがに宝塚出身の天翔は、歩き方やダンスの見せ方に一日の長がある。喜屋武も男装ユニット「風男塾」の元メンバーという利点はあるが、物語が進むにつれ少年に見えたのは、それよりも彼女がもつ芝居の実力ゆえだろう。情感豊かな渡辺の歌声や吸引力のある荻野の演技のほか、小劇場出身らしく笑いをとりながらも、要所要所で舞台を引き締める柿丸の存在感も印象に残った。
舞台は7月5日(日)まで。
取材・文 佐藤さくら