現実が空想に移る過程

「ながいあいだ、三人はだまって、下を流れてゆく川をながめていました」、『プー横丁にたった家』第6章、E.H.シェパード、鉛筆画、1928年、 ジェームス・デュボース・コレクション © The Shepard Trust

企画展第2章は「お話は、どうかな? 」と題して、プーの挿絵の世界をたくさんの原画に囲まれて体験できる貴重な空間です。

一枚一枚鉛筆の細かい線まで堪能できる機会は本当に貴重です。

お気に入りのシーンを探してみてください。

ポイントは、先ほどのスケッチとの変化。

つまり、現実を描いた模写を空想世界へと変化させる課程に注目です。

草木が実際のアッシュダウン・フォレストとどれほど近いものか、どのように描写が省略され背景になっているのか、シェパードの美しい描き方が見て取れます。

さらにプーたちキャラクターも立ち姿から性格がわかり、一枚の絵から動きまで伝わってきます。

ぬいぐるみの模写と見比べて、どのようにプーたちを描いているのか、その一瞬を切り取って描く技に注目です。

シェパードはキャラクターの感情を表情ではなく姿勢で表現します。

プーも後ろ姿の方が印象的でそのシーンの空気を感じさせるものが多いです。

空想の世界へ引き込む術

第3章は「物語る術」。

シェパードが用いた技法がより具体的に紹介されていきます。

先ほどから見てきた自然の描き方やキャラクター表現をもっと深く見ていきましょう。

ここでは、鉛筆で描かれた絵とペンで描かれた絵を見比べることもできます。

よりはっきりと草木の描写が省略される様子がわかります。

空白によって読者の想像力に委ね、キャラクターを引き立てる術です。

さらに、「浮かぶクマ丸」のシーンでは、連続画でキャラクターの動きを表現。

連続画とはいえ、パラパラ漫画のような連続ではなく、一枚一枚の絵の間に時間が少し空いています。

それぞれの絵だけでも動きを感じさせる絵だからこそ、6枚の連続画でもある程度長い時間を表現できるのです。

そして、「クマのプーさん」の特徴は、文章と挿絵の配置まで計算されていること。

先述の通り、ミルンとシェパードは念密に打ち合わせながら制作を進め、文章と挿絵の効果を最大限に引き出す構成を作りあげました。

ページ全体が一枚の絵であり、物語の説明を敢えて文章では行わず挿絵に任せることまで行っています。

「ディズニー特集 -ウレぴあ総研」更新情報が受け取れます