ジャズダンスエンターテイメント集団「梅棒」の第4回単独本公演『クロス ジンジャー ハリケーン』が8月20日、六本木の俳優座劇場で開幕。公演に先立ってゲネプロが行われた。
冒頭、観客に向かってこれが“クロス ジンジャー ハリケーン”の公開収録であるという説明がなされる。“クロス ジンジャー ハリケーン”とは、日本の真ん中らへんにあるという“しょうが島”唯一のFM局umebou局から、DJ OH(塩野拓矢)が送るラジオ番組。今回は特別に六本木で収録されるという設定だ。こうして観客は、DJ OHを通じて架空の島へと誘われる。
しょうが島は、人口500名ほどの小さな島。野球少年・筧将大(遠山晶司)は甲子園を目指すも敗退し、落ち込んでいる。そんな彼を取り囲むのは、人を恫喝してばかりいる地主の息子・砦一博(遠藤誠)、その子分でテキ屋をしている野士秀喜(大村紘望)、ラジオが大好きなオタクの中学生・五十嵐卓(鶴野輝一)、駐在所勤務の警官・板掛英二(櫻井竜彦)、マッチョな漁師・北村翔(飯野高拓)、島の中心にある神社の神主・大幣真澄(天野一輝)といった面々。ある日、都会からひとりの女性・曽野田ゆうき(野田裕貴)がやってきたことで、島の日常に変化が起きる。
白いレースの服に白い帽子やパラソルといったいでたちで、絵に描いたようなマドンナぶりを発揮する曽野田は、島の男たちを次々とノックアウト。筧との間に恋が芽生えそうな雰囲気も。毎夏恒例の夏祭りに島民たちが沸き立つ中、砦は筧を陥れ、曽野田をさらおうとするが――。織田信長の家臣だった梅沢荘六の霊(梅澤裕介)や、イソップ寓話「金の斧、銀の斧」の神様的役割を果たす池の主・イケビッシュ(伊藤今人)も登場し、舞台は混迷を極めながら怒濤のクライマックスへと向かっていく。
DJ OHのトークや、本能寺の変を再現した劇中劇をのぞき、台詞はナシ。全編、J-POPの名曲と共に、弾むようなダンスが繰り広げられる。あの曲をこんな場面で!という、梅棒ならではの驚きや可笑しさも健在だ。荒唐無稽な物語に息を吹き込む、出演者の熱量と疾走感にご注目あれ。
高校野球、スイカ、花火、海水浴、恋、祭り……。夏がぎっしり詰まった梅棒『クロス ジンジャー ハリケーン』を観ずして、今年の夏は終われない。
公演は8月30日(日)まで。
取材・文:高橋彩子