中村獅童

中村獅童が倉庫、さらには新宿・歌舞伎町での歌舞伎公演に挑む話題作、オフシアター歌舞伎『女殺油地獄』。映画監督、俳優としても活躍する赤堀雅秋が、初めて歌舞伎の脚本、演出を担う。コクーン歌舞伎『四谷怪談』(2016年)で演出助手を務めて以降、獅童と親交を深めてきたという赤堀。この異色の組み合わせから生まれる歌舞伎とはいかなるものなのか。ふたりに話を聞いた。

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“伝統と革新”の精神で、これまでチャレンジングな企画を次々と打ち立ててきた獅童。このオフシアター歌舞伎も、獅童が長年あたためてきた企画のひとつだ。「20代でニューヨークの舞台に立った時、いろいろな演劇のスタイルがあることを知りましたし、また幼少期に観た唐十郎さんのテント芝居など、アングラに対する憧れも自分の中にはあったと思います。そういった影響、そして今自分がやるべきことを考えた時、倉庫で歌舞伎をやってみたいなと。古典を守りつつ革新を追求する。そんな自分なりの生き方を追求していく上で、“獅童らしい”スタイルをつくっていく。そのためにもこの企画を成功させて、続けていきたいと思っているんです」

『四谷怪談』の現場に参加したことで、歌舞伎に対する考えが大きく変わったと言う赤堀。「青臭い言い方ですけど…」と前置きした上で、「歌舞伎も自分たちの演劇も“魂”は変わらない」と語る。そしてその思いは、自ら演出を手がける本作でも同じようで、「なにか奇をてらったものをやろうとも思いませんし、極めてアナログに、それでもお客さんの心にちゃんと届くような作品を、歌舞伎と寄り添いながらつくっていけたらと思います」と続ける。

倉庫での歌舞伎公演を考えた時、獅童の頭にパッと浮かんだ演目がこの『女殺油地獄』。油まみれの凄惨な殺しの場面が大きな見せ場となるだけに、赤堀は「僕が人殺しの作品ばっかりやっているから声をかけられたのかな」と笑う。一方獅童は、「歌舞伎のダークな部分を見せたい」とひと言。さらに「現代で起こってもおかしくない、事件性をもった演目ですからね。こういった危険な演目をアングラな倉庫、そして歌舞伎町でやることに大きな意味を感じています」と明かす。

また四方を客席に囲まれた舞台を採用したことについて、「手を伸ばせば届くような、ライブ感のある、生々しい感覚のお芝居になればいい」とは赤堀。獅童も「観客がこの事件を“目撃”してしまったようなものになれば」と期待を寄せる。

公演は5月11日(土)から17日(金)まで、東京・天王洲アイル 寺田倉庫、5月22日(水)から29日まで(水)東京・歌舞伎町 新宿FACEで上演。一般発売は4月6日(土)。前日の4月5日(金)10時よりチケットぴあにて先着先行プリセールを受付する。

取材・文:野上瑠美子