買い物上手や節約上手が賢く活用しているポイントサービス。起源には諸説あるが、レジシステムと連携したものではヨドバシカメラが1989年に開始したポイントカードが日本初といわれている。 現在では、店舗固有のものから、クレジットカードに紐づくもの、Tポイントのように複数の販売店を横断するものまで、さまざまな形態が存在している。お得なポイントを獲得する機会が増える一方で、複数のポイントを貯めた結果、管理が煩雑になるというデメリットも生じている。せっかく貯めたのに有効期限が切れていた、というミスは誰しも経験があるだろう。
その解決方法として注目を集めているのが、複数のポイントの一元化、すなわち共通ポイントへの変換だ。1ポイント当たりの価値や有効期限がそれぞれに異なるポイントを全てまとめることで、ポイント管理をしやすくするサービスがここ数年で一気に支持され始めた。
共通ポイントを発行するサービスの中で国内最大級といわれているのが、ポイントサイト「ドットマネー」だ。事業開始から4年で会員数は1850万人(2019年4月時点)まで膨らみ、ポイント交換できる加盟店は120社を超えた。なぜ短期間でここまで急成長したのか、鈴木英社長にその要因を聞いた。
取材・文・写真/大蔵 大輔
ドットマネーはサイバーエージェントで社内スタートアップという形で、15年6月に事業をスタートした。もともとは自社サービスで利用できるAmebaコインを運用するサービスだったという。
「始まりは外のポイントを内(Amebaコイン)に還元しようというものでした。ただ当時のAmebaコインの利用はブラウザゲームが主流で、ユーザーは限定的。広がりをもたせるために交換先を増やそうということになり、現在のサービスの基礎ができあがりました。子会社化の理由は収支がトントンになるという目処がみえてきたこと、あとはサイバーエージェントの社風が大きいです。子会社を立ち上げて、経営者を育てようという文化が独立を後押ししました」(鈴木社長)。
同サービスが国内最大級である理由はいくつかあるが、最大の売りはポイント交換にかかる手数料が無料ということだ。最も得だから最も選ばれている、という分かりやすい図式になっている。加盟店の多さも魅力だ。交換元も交換先も多岐にわたるので、それぞれのユーザーのスタイル合わせた使い方ができる。
Amebaアカウントでログインできることもあり、初期段階からAmebaサービス利用者を中心にユーザー数は確保できた。「Amebaブログのユーザーもポイントサービスのユーザーも、比率として高いのは主婦層。親和性があり、初年度で会員数は500万人を超えました。以降は加盟店の追加などをきっかけに着々と規模が拡大している」。
話を聞いていると気になってくるのが収益源。ユーザーの手数料は無料、サイトをくまなくチェックしても広告のようなものは見当たらないし、加盟店から手数料が得られるとはいえ限定的だ。鈴木氏によると、収益源には加盟店の手数料のほかに、加盟店の広告、失効収益(ポイント失効に伴う収益)があるという。
加盟店の広告とは、キャンペーン情報(例えば、期間限定でポイント還元率が5%アップするなど)をサイト内で周知しているバナーのことだ。ユーザーからすると「運営からのお知らせ」にしか見えず、広告とは思われない。「リワード広告を出せば収益を生むことはできる。しかし、それではリソースが分散するし、ユーザビリティも悪くなる」。
とことんユーザーの使いやすさを追求するのは「お小遣いサイトではなくて交換業に振り切ったサイト」という軸があるからだ。「貯めたポイントをドットマネーに、ドットマネーから使いたいポイントに、と2回変換するのは仕方ないとはいえ手間。少しでも交換にかかる工数を減らすために知恵を絞っている」。
今後、ドットマネーはどのようなサービスを目指すのか。鈴木社長にたずねたところ、「オープンプラットフォームの最先端を常に走っていたい」という回答が返ってきた。
「企業がポイントを発行するそもそもの目的は、自社サービスにユーザーを囲い込むこと。しかし、現在は同じ思惑をもった企業が世の中に溢れ、ユーザーにとってポイントをもつのが億劫な状況になっています。すると『どこのポイントがすぐれているのか』という価値競争が起きてきます。ドットマネーの目指す『どこでも貯めれて、どこでも使える』というビジョンはその中でユーザーに寄り添ったものに映るはずです」。
平成の30年でさまざまに変遷してきたポイントサービスは、いま大きなターニングポイントを迎えている。巨大な経済圏を構築していたポイントが分裂し、多くのポイントが群雄割拠する時代に突入するのか。はたまた、その先に再び大きな枠組みをもったポイントが登場するのか。その問いには鈴木社長も「どう転ぶかはまだ分からないですね」と笑う。
ただ確かなのは、これまでのようにユーザーが企業の思惑に振り回されるのではなく、ユーザーの意向がサービスの方向性を決めていく時代になるだろうということだ。ドットマネーが目指す「オープンプラットフォーム」はそのトレンドに見合った理想のポイントサービスになっていくかもしれない。