人間と本物のアンドロイドが共演する映画『さようなら』が日本公開前から高い評価を集めている。作品の評価はもちろん、劇中に出演するアンドロイド・ジェミノイドFの“演技力”も高く評価されており、映画祭などでアンドロイドが女優賞に輝く可能性もありそうだ。
本作の舞台は、放射能に侵され、日本国民が“棄国”を選択した近未来。主人公の女性ターニャは外国からの難民で、病弱な彼女をサポートするアンドロイドのレオナと暮しているが、彼女の避難順は来ないまま、周囲の人々が去っていき、死が迫るターニャと、死を知らないレオナは“最期”の時を迎える。
本作は、青年団を主宰する平田オリザと石黒浩教授が大阪大学で2007年から共同で研究・開発してきたプロジェクトの一環として上演された舞台『さようなら』が基になっており、舞台にも人間の言語、仕草、視線を徹底的に見つめ、研究してきた平田が演出したアンドロイドが登場し、人間と舞台上で共演した。
本作を手がけた深田晃司監督は、『歓待』『ほとりの朔子』などの作品で海外からも評価されており、本作も海外の映画祭への出品が期待されており、その皮切りとして22日(木)に開幕する第28回東京国際映画祭のコンペティション部門で上映が予定されている。本映画祭のプログラミング・ディレクターである矢田部吉彦氏は「最後まで、女優がアンドロイドに扮しているのではないかという思いに囚われ、『アンドロイド役はどなたが?』と関係者に聞いてしまった。本当にアンドロイドらしいのだが、実はまだ密かに疑っている。それほど見事な存在感と演技なのだ。もはや垣根はない。実際にアンドロイドであったとしても、堂々たる女優賞候補である」とコメント。ブライアン・シンガー、トラン・アン・ユンら審査員たちがジェミノイドFの演技をどう評価するのか気になるところだ。
『さようなら』
11月21日(土) 全国ロードショー