劇団旗揚げ39周年を迎えた劇団☆新感線が、感謝の気持ちを込めて“39サンキュー興行”と銘打った興行を開催中だ。生田斗真が主演した“春公演”『偽義経冥界歌』に続き、“夏秋公演”では倉持裕が書き下ろす、いのうえ歌舞伎《亞》alternative『けむりの軍団』の上演が決定。劇団員生活35年目という節目を迎える古田新太が主演し、黒澤明作品などの名作映画へのオマージュをちりばめた娯楽時代劇で観客を魅了する。正室として嫁いだ家を飛び出し、古田演じる十兵衛らと共に珍道中を繰り広げる姫君・紗々姫を演じる清野菜名に、公演への思いを聞いた。
-『髑髏城の七人』Season 花(以下、髑髏花)以来、2度目の新感線の舞台になりますね。
一度出演させていただいて、またこうやって呼んでいただけるのはすごく光栄なことだと思います。今回、記念すべき古田(新太)さんの35周年ということで、これからも歴史として残っていくであろう回に自分も参加できるのはとてもうれしいです。
-髑髏花以前から新感線の作品はご存知でしたか。
はい! なかなかチケットが取れないので劇場では見ることができなかったのですが(笑)、実は高校生のときに(劇団員の)オーディションを受けたこともあるんです。なので、髑髏花の出演が決まったときは夢みたいで、憧れていた人たちに囲まれて同じ舞台に立てることが感慨深くて、一生懸命頑張ろうと思いました。
-清野さんは、本格的な時代劇は本作が初挑戦だそうですね。制作発表では「苦戦しそうだ」という言葉もありましたが。
台本を読んでも分からない言葉ばかりで、一つ一つ調べながら読みました。なので、最初に読んだときはなかなか話が入ってこなかったんです。(共演者の)皆さんは本当にすんなり意味が入ってきているのかな。1回で読めているのかなって、今、気になっています(笑)。
-時代劇は言葉が独特ですから。では、本作で魅力を感じたのはどんなところですか。
新感線は、“装置”がたくさんちりばめられていて、からくりがいっぱいあるじゃないですか? 今回もそういった新感線らしい“装置”が仕掛けられているので、私自身もどういうふうに繰り広げられるのか楽しみです。
-早乙女太一さん、須賀健太さん、そして清野さんが出演するということで、アクションにも期待が高まります。アクションシーンは多いのでしょうか。
実際にどこまであるのかはまだ分かりませんが、せっかくの新感線の舞台なのでたくさんやりたいなとは思っています。
-主演の古田さんとは髑髏花に続いての共演になりますね。古田さんの印象は?
安心感がある方だと思います。髑髏花では古田さん(の登場シーン)は途中からだったんですが、その場の空気を一瞬で変えてしまう力を持ってらして、本当にすごい方なんだなって思いました。どこの場にいっても主(ぬし)な感じがして(笑)。ドシッと構えていて、すごく大きな人だなと思います。
-早乙女さんと須賀さんの印象は?
早乙女さんは、踊るような、舞いのような剣さばきが素晴らしくて、うっとりと見ほれてしまうほどなので、そんな方のアクションを生で、稽古場から見られるっていうのはぜいたくだなと思っています。健太くんは、やっぱりお芝居がうまいですよね。健太くんの舞台は、「髑髏城」のSeason 月〈上弦の月〉で初めて見させていただいたんですが、さすがだなって。今まで、映像の現場でしかご一緒してなかったので、舞台でも共演できるのがうれしいです。
-髑髏花での、いのうえひでのりさんの演出はいかがでしたか。
いのうえさんが身振り手振りをつけて全部やってくださるので、とても明確で分かりやすいんですが、それって結局いのうえさんがやるのが一番面白いんじゃないかって思っちゃって(笑)。いのうえさんに勝てないぞっていう不安を持ちながら稽古していましたが、今回も一生懸命やりたいと思います。
-清野さんは映像作品にも多数出演していますが、舞台ならではの良さをどんなところに感じていますか。
ドラマは必要なところを(編集などで)切り取ってくれますが、舞台は自分で(観客に)見せないと伝わらない。前回、いのうえさんにたくさんご指導いただいて、そういった伝える力が自分に足りないと実感しました。ドラマや映像だと、細かい表情を意識して演じることが多かったんですが、舞台ではそこにどれだけの気持ちがあっても、それは伝わらない。全身を使ってどう表現するのかが大事なんだと思いました。
-アクションも見せ方は違いましたか。
全然違いました。映像だと、例えば刀を使うにしても、全部たたんでいくんです。狭い空間でもできるように。でも、舞台は大きく見せるから、剣も思い切り振り回しますし、立ち回りの間合いも違いました。舞台の方が、より動かないといけなくて、難しく感じました。
-髑髏花はIHIステージアラウンド東京での公演だったので、体力的にもきつそうですね。
そうですね。体力もかなり必要でした(笑)。それも自分の中で課題の一つでした。今は、(『けむりの軍団』の公演に向けて)走ったりして体力をつけています。
-今回はTBS赤坂ACTシアターでの上演なので、前回よりは体力面では楽なのではないでしょうか。
そうは思いますが…でも、「きつい」と思いながらやるのは嫌なので、今から体力をつけて、楽しむまでいけたらいいなと思っています。
-今の段階で、紗々姫というキャラクターをどう演じようと思っていますか。
上品なお姫様ではなく、おてんばでアクティブで、勝気な女の子というイメージで演じたいと思っています。この時代になかなか嫁ぎ先のお城を飛び出すなんてできないと思うので、きっと芯が強く、エネルギッシュな女の子なんだと思います。なので、そういった要素をなくさず、元気に演じたいです。
-改めて、作品の見どころを。
今回も新感線らしい立ち回りや歌や踊りなど、「これぞ新感線」というものがたくさん入った作品になると思います。劇団員の方もほとんどが勢ぞろいする特別な作品だと思っているので、多くの方に見ていただきたいと思っています。
(取材・文・写真/嶋田真己)
2019年劇団☆新感線 39興行・夏秋公演 いのうえ歌舞伎《亞》alternative『けむりの軍団』は、7月15日~8月24日、都内・TBS赤坂ACTシアターほか、福岡、大阪で上演。