ジョージ・ルーカスが認めた理由とは

「世界を『ダークサイド』にしてしまいましょう」という言葉も飛び出したが、これは決して、ダース・ベイダーになってしまえという意味ではないそう。ダークサイドへの誘惑に打ち勝ったルークのように、光を得たければ必ず闇を通らなければならない。そう考えながら作品を見ると、彼の写真の中にこそ現実が広がっているようにさえ思えてくる。

実際にセドリックさんにお会いしてみて、自分の世界観というものを持った芸術家という印象を受けた。ジョージ・ルーカスから認められるのも納得である。

本人からも「自分は『場所』のフォトグラファーだ」というコメントがあった。自分の芸術家としての役割をきちんと把握されているのだろう。自分が見たそのままの世界を相手に見せたい。決して誰かに媚びるためにやっているのではないという真摯な姿勢が垣間見えた。

もはやファンではない。スター・ウォーズは生活の一部だ

また「スター・ウォーズのファンのためだけに作品を作っているのではない」とも話していて、本人はスター・ウォーズのファンではないのかと疑ってしまった。しかし、ただファンとしての気持ちを押し出し過ぎてしまうと、作品のバランスが崩れてしまう。そこで、「新作が公開されたら観に行くけど、すぐには観に行かない」と語るなど、絶妙な距離感を取っているのかもしれない。ファンと言うより、もはやスター・ウォーズは生活の一部なのだろう。

実はこれまで、スター・ウォーズ作品を全て見ていたわけではない。初めて「DARK LENS」作品を見たとき、一部の日常世界に架空のキャラクターが違和感なく存在していることに妙な印象を受けた。

その一方で、とにかく「もっと見たい。キャラクターは分からないけど、もっと見たい」と思い、彼のサイトにアクセスしていた。その時点では、なぜその場所にそのキャラクターを配置したかまではよく分からないという印象だった。

しかし、取材に備えて全シリーズを鑑賞したのちに今回の写真展を見たことで、それぞれのキャラクターの背景も分かり、より作品世界が深まったように思う。カーボンで固められたハン・ソロが屋外に晒された「Carbonite, Lille & surrounding wastelands, 2007」は、どことなく哀愁が感じられる。

また、夜の建設現場の前に佇むダース・ベイダーを写した「Darth Vader, Dubai 2009」は、エピソードⅥで新デス・スターの製造を手下たちに急かせていた彼の姿と重なる。作品を通すことで、よりセドリックさんの作品世界にも近づけた。

セドリック・デルソーが繰り広げる「DARK LENS」の個展は、ディーゼル渋谷地下1階ギャラリースぺースにて2016年2月11日まで開催中。入場は無料なので、ショッピングのついでにでも、その新しい世界に足を踏み入れてみてはいかがだろうか。

インタビューでは日本人アーティストとのコラボについても話が出た。我こそはという3DCGアーティストの方もぜひ会場に訪れ、名乗りを上げてみよう。

取材/平原学

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