今年も古川雄大、大野拓朗のW主演で上演された、小池修一郎演出のミュージカル『ロミオとジュリエット』。若さゆえの衝動、苛立ち、興奮が軸となる本作で、見事ダンスという手法でそれらを表現したのが京都出身の振付師KAORIalive。若手俳優の登竜門的作品は、今や若手ダンサーらの憧れのステージにもなっている。とりわけ情感豊かな群舞の振付に定評があり、小池とのタッグでは他にミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』などの大ヒット作でも知られる。そんな彼女が主宰する表現系ジャズダンスチームMemorable Momentが、昨年好評を博した最新ダンス公演『ロミオが描いたジュリエット』を関西で初めて上演する。
Memorable Moment「ロミオが描いたジュリエット」チケット情報
物語は、クラウンが「ロミオとジュリエット」に魔法の筆でいたずら書きをする所から始まる。ページを破り他の童話と混ぜ合わせると、自らも本の中に吸い込まれてしまう。対立し合う王国、幸せの青い鳥が見えない子供たち。離ればなれになったロミオとジュリエットは、いつしか自分たちの手で“真実の物語”を描き始めて……。純愛劇の一方でKAORIaliveは現代性も重視。童話に出てくる「青い鳥」をツイッターに見立てるなど(!)、SNS依存が蔓延する現代の風潮にも警鐘を鳴らす。同時に情報過多の時代に「人生は自分の手で切り拓く」という大きなテーマを盛り込んだ。曰く、「原作では主人公らが互いへの愛ゆえに死を選びますが、今作ではまた違った決断をふたりが下す。死の描き方にもこだわりました」。
見学に訪れた稽古場では、ロミオ役の大柴拓磨ら主要メンバーが和気あいあいと振付の最終確認を行っていた。見学したのは登場人物の紹介場面。本番では誰もが知る童話のキャラクターが映像から飛び出たような趣向で楽しませる。「しかも弱虫のピノキオがマッチョに変身したり。クラウンのいたずらでそれぞれの性格が少しずつ変化する」のも見もの。コミカルな芝居仕立ての場面から華麗なジャンプ、ターン、決めポーズまで。流れるような場面転換で一瞬たりとも飽きさせない。本番ではさらに映像や音楽、衣裳の効果も加わり、これが台詞のない公演であることを忘れるほど、物語に見入ってしまうはずだ。
じつは作品が完成した一昨年前、開演直前に暴風警報が発令され上演が中止となった過去がある。内容に磨きをかけて挑んだ翌年の初演では、「感動で涙が止まらなかった」など、大きな反響を呼んだ。KAORIaliveたちもいつになく手応えを感じ、今回の関西初演に踏み切った。「ダンスへの興味のあるなしに関わらず多くの人が楽しめる作品を目指しました。劇場に入った瞬間から始まる物語の世界をお楽しみください」。
公演は6月22日(土)、23日(日)に兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールにて上演。ゲストダンサーに大柴拓磨、SAWADA(WRECKING CREW ORCHESTRA)、KIMIKO(chore0ringz)、TUKI(TUKIとKUMA)を迎える。
取材・文:石橋法子