若く未完成で混沌としたエネルギーが、作品の源
なかでも、イヤミの名台詞「シェー!」は多くの人が真似をしました。ゴジラもジョン・レノンも「シェー!」のポーズをし、社会現象に。当時、『小学二年生』という学年雑誌にも「シェー!」のやり方を図解で紹介するほどでした。
真面目なのかふざけているのか、よくわからないのが同作の魅力ですね。そんな同作について赤塚さんが真面目に語ったのがこちら。同書で彼の漫画家論が紹介されています。
「よく老大家と言う言葉を聞きますが、児童漫画家に関しては、この言葉は通用しないようです。児童漫画家は“大人のような子供”であり、“子供のような大人”でなくてはなりません。これは特殊な才能というものでしょうか。
ぼくは時々考えるのですが、人生をかくのごとく生きるということは大変楽しいものです。ですからぼくも、おそ松イコール赤塚、チビ太イコール赤塚のつもりで生活したいと思っているのです。児童漫画は悟りや達観の境地といったところからは生まれてきません。若く未完成で混沌としたエネルギーがその源です」
こちらは1966年に語られたものですが、何だか現代の私たちに投げかけているようにも聞こえます。
子供っぽい大人とは、決してネガティブな意味を持ちません。「子供っぽい=不真面目」と語られがちでありますが、赤塚さんは「子供っぽい」は大切なことと位置づけられています。
未完成な状態であっても、好奇心と遊び心を持ち続けることは、誰かを楽しくさせ、また、それによってより自分も楽しくなること。「大人は大人らしく」生活することが当たり前とされる現代ですが、あまりかたくなりすぎず、気を抜いてみるのも良いですね。さすが、赤塚不二夫先生。ありがとうございます。
(屯田兵)
【書籍情報】『赤塚不二夫80年』ぴあ