篠原涼子(写真 : 田中舞)

 圧倒的クオリティーのキャラクター弁当が注目を集めた「kaori(ttkk)の嫌がらせのためだけのお弁当ブログ」を書籍化した『今日も嫌がらせ弁当』が映画化され、6月28 日から公開される。本作で、反抗期の娘(芳根京子)への伝えられない思いをキャラクター弁当に込めた母を演じた篠原涼子に、映画の裏話や、弁当や家族について聞いた。

-今回の普通のシングルマザーという役柄についてはどう思いましたか。

 原作をとても面白く読んで、kaori(ttkk)さんはどんな方なんだろうという興味が湧きました。それで、この本を書いた人にスポットを当ててみたいと思いました。ごく普通の家庭の奥さんでも、その一人一人にスポットを当ててみれば、さまざまな努力の跡がうかがえると思います。今回はその一つを描いたという感じがします。なかなかこうした作品とは出会う機会がないので、今回はとてもいい経験になりました。

-では、実在の人物を演じることについてはいかがでしたか。

 塚本(連平)監督から、原作者のkaori(ttkk)さんのイメージに近い衣装にしたいと言われたので、衣装はkaori(ttkk)さんがよく着ているというチェック柄のものがほとんどです。あとはメークと眼鏡で見た目をkaori(ttkk)さんに似た感じにしました。ただ映画は、リアリティーよりも分かりやすさの方が大事なので、もちろん実物のkaori(ttkk)さんとは違うところもたくさんあります。ご本人にも撮影前にお話をして了解していただきましたが、お話をする中で「朝、娘を起こすときはラテンダンス風に踊っていた」など、映画に取り入れた部分もありました。ただ、あのシーンは自分の中ではふに落ちていませんが…(笑)。

-この映画のテーマは、嫌がらせとは名ばかりの究極の愛情弁当ですが、ご自分の子どもさんに嫌がらせ弁当を作ったことはありますか。

 嫌がらせ弁当を作ったことはないです。うちの息子は普通のお弁当ですら食べてくれない時期があったので、嫌がらせをしたらもっと食べてくれなかったかもしれません(笑)。幼稚園のときに、「まずは栄養よりも、僕、全部食べられたよという感覚を覚えさせることが大切」だと教えられたので、完食できるように、息子の好物の唐揚げやウインナーや卵焼きを入れて作っていました。

-では、弁当とはどういうものだと思いますか。

 お弁当は愛の塊だと思います。お弁当は、作ってくれた人がその場にいなくても、その人の顔が浮かびます。中身を見て、作ったときの様子や気持ちを想像しながら、かみしめながら食べるところがあります。なので、作ってくれた人の深い愛を感じるものだと思います。

-ご自分の息子さんにもやがて反抗期が来ますね。

 そのことは最近よく考えます。相手は男の子で異性なので、どうやって対抗していこうかなと。頭ごなしに怒っても駄目だと思うので、息子の意見をちゃんと聞いて、コミュニケーションを取っていければいいなと思います。ただ、息子の出方によって対応は変わると思うので、それを考えると今からドキドキします。

-演じた役とご自身のお子さんとの接し方で共感できる部分はありましたか。

 うちは男の子で、会話も多く、今はコミュニケーションも取れているので、映画とは状況が違います。でも、いつかは反抗期が来て、この映画のようになるのかなとは思いました。そういう意味では、自分の子もこうなるかもしれないと考えながら、覚悟をしながら演じたところはありました。ただ、反抗期は誰にでも訪れるものだし、成長の証しでもあるので、むしろ健康的で喜ばしいものだと思います。だから反抗期が来たら、「よし来たぞ」という感じで、楽しみながら乗り切れればいいかなと思います。

-私生活での家族への愛情表現で大切にしていることはありますか。

 スキンシップを取ることも大切ですが、健康や元気の源となる食事が大事だと思っているので、食事を作ることが一番の愛情表現だと思います。私は食べることが大好きなので、食事をしていると幸せな気分になります。うちの食卓は、家族みんなが一つに固まってコミュニケーションを取る場なので、もうしゃべりっ放しです。

-では、最後に映画の見どころを。

 子どもの心を知りたい母がいて、言葉ではなく、お弁当という方法で愛を伝え、それを通して二人の絆が深まっていく様子を描いています。それを見て、改めて親子関係の大切さを感じていただけたらと思います。あとは、いくら子どもが反抗しても、忍耐強く、懐を大きく構えて、ちゃんと見守っているよ、というところが伝わればいいなと思いました。ただ、あまり難しいことを考えずに、気楽な気持ちでご覧になっていただけたらとも思います。

(取材・文/田中雄二)