オタクカルチャーを一般層にも分かりやすく伝えられるスキルが凄い!

『ゲームセンターCX』を観ていて、とてもユニークだと思うポイントがあります。それは、この番組がテレビゲームを愛するコアなファン層だけではなく、普段は、ゲームを余りプレイしない一般層でも笑える作りになっているところです。

例えば、前述の有野さんの話術に関しても、その特異な言語センスによる"ボヤキ"風のツッコミが視聴者の笑いを誘うわけですが、そうしたツッコミの何れもが、あくまで"一般人の視点"に目線が合わせられているのがポイントです。

そこで、敢えて、マニアックでコアな話には持っていかず、誰しもが分かる、知っているものを使って笑いにしてみせる。有野さんのオタクネタは、よい多くの人に受け入れられるようにチューニングが施されているのです。

有野さんは、そうした幅広い層に目線を合わせて話をするスキルがとても高い方です。だからこそ、自分が好きなもの、おもしろいと思ったものを他人に伝えることが抜群に上手く、より多くの人に届けることができるのでしょう。

そして、こうした話術は、オタク型の人間が、自身の好きなものを相手に話す際に、とても参考になります。

マニアックに成り過ぎない、知識をひけらかさない、相手が楽しめるようにプレゼンテーションを工夫する。そうすれば、その手の知識がない人でも、自分の好きなものに対して興味を持ってもらえるかもしれない。

その辺りのバランス感覚の巧みさには、色々と見習うべきところがあるかと思います。

有野さんの"二次創作"的なパロディ感覚が凄い!

このように、オタクカルチャーを分かりやすく調整し、笑いにしてみせる有野さん。それだけではなく、好きなものを自身の芸に取り込む技術にも長けています。

実は、よゐこのコントには、アニメや漫画、ゲームといったオタクカルチャーをネタにしたパロディコントが多数存在しています。

某超有名RPGゲームをメインの勇者一行ではなく、村人を主役として描いた『勇者が村にやってくる』、パンが主人公の長寿アニメ作品を準主役キャラの目線からちょっと毒を含めて描写する『脇役』、これまた国民的人気を誇るゲームに登場する兄弟の哀愁を帯びたドラマが繰り広げられる初期作『マリオブラザーズ』などなど。よゐこのコントには、オタク的な感性を起点にした笑えるネタが沢山あります。

毎年恒例となっている単独ライブでは『ゲームネタ祭』『まんがネタ祭』といったタイトルで、オタクカルチャーを元ネタにしたコントを生み出し続けているよゐこ。

その何れもが、ちょっと捻くれた視点から原作を再解釈し、再構築するという作風であり、いわば、"二次創作"といった趣のコントになっています。

まるで、ギャグパロ同人誌のように、自身の好きなもの、おもしろいと思ったものをパロディにして、そこに、ナンセンスな笑いをトッピングすることで、笑いにしてみせる、よゐこのコント。

自身が触れた様々な文化をオタク特有の二次創作的な感覚でパロディにし、人々を楽しませるネタを作り続けるよゐこの姿は、オタク者にとって非常に理想的な姿だと思います。

作品を楽しみつつ、更に、そこを基盤にして自分たちの作品も作ってみせる。何より、よゐこのオタクネタはやっている本人たちが物凄く楽しそうなのも素晴らしいです!

ファン気質とエンターテイナーとしての矜持をミックスし、お客さんや視聴者を楽しませる感覚には、思わず惹かれてしまいますよね。