歌舞伎俳優の尾上菊五郎が、2月の歌舞伎座・昼の部『通し狂言 新書太閤記』で初めて羽柴秀吉(木下藤吉郎)を演じる。吉川英治が書いた「新書太閤記」を原作にした舞台は、これまでも様々な俳優によって上演されてきたが、菊五郎は祖父の六代目菊五郎が初演し、度々演じていたことから、「絶対やりたいと思っていた」と念願であったことを明かした。
今回の舞台では、初めて上演される場面も加わるが、そこには菊五郎のこんな思いがある。「昔原作を読んで、どこが面白いか、どこが劇的かを考えた時に、秀吉が皆をいつの間にか味方につけて難題を乗り越えていく、その発想の豊かさだったり、ひとたらしなところを出していきたいと思ったんですね。そういう魅力のある人をやりたいんです」
テレビや映画、舞台など秀吉を採り上げた作品は数多あるが、菊五郎は「今回は、チョンと柝も入れて“歌舞伎風”にやってみたい」と話す。アイディアも色々あるようで、秀吉が織田信長の命を受け竹中半兵衛を口説きに行ったのに、結局秀吉の麾下になってしまう場面については「信長は最初は絶対許さないと思うんです。本当は自分の家来にしたかったのに、いきなり秀吉の家来になっちゃったら怒るでしょ?そういうところをやりたかったんです。大概は口説いたところで終わりですけど、それじゃあつまらない。“大逆転”をしたら舞台で面白いんじゃないかと思って」と見どころを語る。さらに、“中国大返し”では、「(急に戻ることになった訳で)ずっと(重たい)鎧を着ているはずがないから、素っ裸で陣羽織を着ようかなと思ったり。実際の秀吉はどうだったのか、当時を思っていろいろと考えました。
脚本家とも細かく打ち合わせを重ねたようで、「一つひとつの場面を簡潔に、面白くしたいと思ってね。ところがその作業が大変で…」と新たに創作する苦労を語り、「台本が出来上がったのがつい最近で、膨大なセリフの量に泣かされてますよ。稽古にあとひと月欲しかったな。DAIGO君の言葉を借りると“KTO”。困った・とっても・覚えられない」と笑わせた。
「二月大歌舞伎」は2月2日(火)から26日(金)まで、東京・歌舞伎座にて上演。チケット発売中。