実際、『家族のうた』の初回で、主人公・正義(オダギリジョー)の前に現れたのは、小学6年生の娘・美月(大森絢音)と小学2年生の陸(藤本哉汰)。そして、こころ(杉咲花)という中学2年生の娘だった。しかも、陸は美月の異父弟なので、正義とは血が繋がっていない。もうひとり、謎の老人(藤竜也)も家に転がり込んできたが、彼が正義を捨てた父親かどうかはまだ不明。いずれにしても、子供たちの設定はドラマのメインではないので、『パパはニュースキャスター』と似ているという印象は、ほとんど受けなかった。
ただ、TBSの『ATARU』側の現場スタッフが、この問題を蒸し返す行動に出た。初回、警視庁捜査一家の刑事・舞子(栗山千明)の実家に、上司である沢(北村一輝)が上がりこんでいるシーンで、沢が「ババはニュースキャスター」というタイトルのドラマを見ていたのだ。パパではなく、ババ。おばあちゃんがニュース原稿を読んでいて、3人の孫がそのニュース番組を見ているという場面だ。そして、舞子がそのテレビを乱暴に消し、ストーリーは何事もなかったように進んでいった。こういうシーンが盛り込まれることは伴一彦氏も知らなかったようで、初回放送後、そのことを知った伴一彦氏はTwitterに「下品」と書き込んでいる。
じゃあ、『ATARU』というドラマ全体がひどかったのかというと、決してそんなことはなく、予想以上に面白かった。中居正広が演じるチョコザイが、特殊な能力を持ったサヴァン症候群という設定なため、実質、栗山千明が主役のような形で話が転がっていくところが功を奏していたと思う。しかも、栗山千明が演じる舞子のちょっとクセのあるキャラクターがいい。そういえば、『家族のうた』のオダギリジョーとは『熱海の捜査官』(20010年・テレ朝系)でコンビだったけど、あの時の北島紗英に似てなくもない。
とにかく、チョコザイが出す事件解決へのヒントが、突拍子のないものでも不自然ではない設定なので、他のミステリーとは違う切り口でストーリーが進められる。チョコザイの過去も小出しにしていくようなので、そこで引っ張れるのも大きいと思う。なんで舞子の上司役で出演している千原せいじを、ムリヤリにでも関西弁のキャラにしてしまわなかったんだろうとかいう残念な面もあるけど、十分に楽しめそうな作品だ。
で、『家族のうた』の方も、そんなに悪い作品ではない。主人公の正義(オダギリジョー)が、落ちぶれてもロックミュージシャンというところが大きな軸になっていて、単にニュースキャスターから職業を変えただけではないことはハッキリと分かる。挿入歌を提供しているThe Birthdayの曲もカッコイイ。むしろ、音楽とストーリーのシンクロ具合は、今のところ木曜10時の『カエルの王女さま』よりもいいし、前期の『ハングリー!』より主人公は中身からロックしている感じだ。
オダギリジョーと子役たちの本格的な絡みが始まれば、また見どころが増えるだろうし、正義の変化を音楽できちんと表現してくれそうな期待もある。一話完結形式ではないので、急に視聴率が上がることはないと思うけど、こっちも見て損はしない作品だ。
ということで、今期の日曜9時対決は、初回の視聴率だけで優劣をつけるのは性急すぎるような気がする。DVDレコーダーを稼働させて、何とか両方ともチェックしてみよう。