現代のバレエ界において“レジェンド”という言葉がもっとも相応しいダンサー、アレッサンドラ・フェリとロベルト・ボッレ。彼らが9人のゲストたちと展開する〈フェリ、ボッレ&フレンズ〉。その開幕を前に、ふたりに公演の見どころを聞いた。
ふたりは今回、Aプロで上演されるアシュトン振付『マルグリットとアルマン』で共演。オペラ「椿姫」と同じ、デュマ・フィスの小説を原作とした35分ほどの作品だ。「私の大好きなバレエなの。これより先に、ジョン・ノイマイヤーが振付けた『椿姫』でもマルグリットを踊っているけれど、おかげでアシュトンのマルグリットでも、そのキャラクターの陰影を心の底から理解して演じることができているわ」と話すフェリ。ボッレは、彼女が演じる高級娼婦マルグリットに恋する純粋な青年、アルマンを踊る。「非常に密度の濃いバレエです。この作品を核に、いくつもの宝石をちりばめるようにしてプログラムを組みました」と話す。その美しい容姿から、イタリアの貴公子と呼ばれてきた彼だが、長く芸術監督を務める〈ボッレ&フレンズ〉の初の日本公演となる今回、実に対照的なふたつのプログラムを組んできた。
「いっぽうのBプロは、(ジョン・ノイマイヤーが芸術監督を務める)ハンブルク・バレエ団のダンサーたちも参加して、敬愛するジョンにオマージュを捧げるプログラムに。僕が踊る『オルフェウス』は彼が僕に振付けてくれた作品だし、アレクサンドル・リアブコとは、ジョンが振付家ベジャールの70歳の誕生日に捧げた『作品100~モーリスのために』を踊ります」(ボッレ)。フェリも、「今回は私たちが80歳を迎えたジョンへのお祝いと、感謝の気持ちを込めたいわ。私も『バーンスタイン組曲』でハンブルクの彼らと共演し、また、私にとって極めて特別な作品、『フラトレス』を踊ります」。イタリアの伝説的女優、エレオノーラ・ドゥーゼを題材とし、フェリのために創作されたバレエ『ドゥーゼ』、その第2幕に配された場面だ。「瞑想的で、スピリチュアルな作品です。それは死後の世界であり、すべてがゆるやかに進む、まるで禅の庭のような美しさです」(フェリ)
『ロミオとジュリエット』や『マノン』などのドラマティックな役柄で一世を風靡したフェリ。44歳で1度引退するも50歳で見事に復帰、多くの人々を魅了し続ける彼女の、まさに新境地だ。ボッレも、「Aプロ、Bプロと全く違う世界をお見せすることになるから、両プログラムとも観ていただかなきゃ、損ですよ!」と笑顔を見せた。公演は7月31日(水)~8月4日(日)、東京・文京シビックホールにて。チケットは発売中。
取材・文;加藤智子