日本マイクロソフト コンシューマ&デバイス事業本部の檜山太郎執行役員常務

2020年1月14日にWindows 7の延長サポートが終了する。EOS(End of support)まで残り5カ月を切る中、まだ国内に約1000万台のWindows 7搭載PCが眠る。国内PC市場の年間需要は約400万台というから、600万台が市場に取り残されてしまうのか。PCメーカー、家電量販店、インテルなどと連携しながら業界を挙げた対策が取られている。日本マイクロソフトでコンシューマPCビジネスを統括するコンシューマ&デバイス事業本部の檜山太郎執行役員常務に現状を聞いた。3回に分けて紹介する。


取材/細田 立圭志 大蔵大輔、文/細田 立圭志、写真/松嶋優子

「ネットにつながってないから大丈夫」は大誤解

OSのサポートが終了してしまうので、常に配信しているオペレーティングプログラムが停止します。Windows 7やそれ以前のOSのPCをお持ちのお客様でも、PC自体は起動しますが、アップデートするプログラムが受け取れなくなるので、最新のサポートやマルウェア、ウイルス、フィッシングに対する防御技術に対応できなくなります。

「絶対にインターネットにつなげないから大丈夫だ」と思うかもしれませんが、例えば、カメラやスマートフォン(スマホ)で撮った写真をメモリカードなどでPCに取り込む際、物理的にさまざまなウイルスが侵入する可能性があります。自宅ではネットにつなげずに使っているWindows 7のPCでも、外部でネットワークにつながっている機器から感染してしまう危険性があるのです。

同じように「PCにセキュリティソフトが入っているから、ネットにつなげずに使うし大丈夫」と思うお客様も多いようです。しかし、セキュリティソフトが最新の技術に対応したものに更新されていないので、外部からウイルスが入ったときの対応は難しくなります。

家族でPCを共有して使っている場合は、なおさら感染する危険性が高まります。ですので、この機会にぜひともWindow 10にアップデートしていただきたい。

国内の一部SMB(Small and Medium Business)を含むコンシューマ領域で約1000万台が残っているとみています。PCの年間需要は約400万台(前年比5~6%増)です。

いいえ、最新のWindows 10対応PCへの買替台数が400万台で、他にWindows 7からWindows 10のアップデートで対応するケースが250万台あるとみています。残念ながら、そのまま使われる方が330万台ぐらい残るのではないかと見積もっています。

できるだけ買い替えを促していきたいところですが、計算上は残ってしまうのが実態です。しかし、この最後の330万人の方が残ってしまうこと自体、コンシューマPCビジネスに関わるわれわれの業界が抱えている課題があると考えられるのではないでしょうか。

つまり、最新ノートPCの飛躍的に上がった技術でできることや、どれだけ暮らしが便利になり、仕事の生産性が上がるかを、しっかりとお客様に伝えきれていないのでないかという課題です。

残念ながら約330万台は残ると試算する檜山執行役員常務

需給予測はXP時より格段に向上

各PCメーカーは自社製品の中でWindows 7がどのぐらい残っているかを把握していて、われわれも情報を共有しています。また、メーカーと家電量販店でも、しっかりと需給に合わせた在庫管理をしながら準備しています。

Windows XPのEOSは14年でしたが、この5年間でサプライチェーン・マネジメントは相当にデジタル化が進みました。需給予測の精度が上がっているので、マイクロソフトも連携して対応していきたいと思います。

XPのときもそうでしたが、家電量販企業の方々と議論しているのが、今年の商戦期のサイクルです。夏商戦後の10月に消費増税が控えています。

そして、12月の年末商戦は来年1月のEOSのタイミングと重なります。その後、われわれがバックトゥースクールと呼ぶ大学や高校など入学準備の2、3月の商戦期に突入していきます。バックトゥースクール商戦の主力モデルは春モデルとなり、EOSや年末商戦で扱うモデルとは異なるので、年末とは違うピークが起きることが予想されます。

いずれにせよ、これら四つの商戦のバランスを見極めながら、どのように扱っていくかが難しい課題です。例えば、梅雨明けが例年よりも遅れましたが夏商戦後の猛暑で想定以上にエアコンや冷蔵庫、洗濯機などが売れたら、PCの販売台数は下がるという相関関係があります。

逆に、エアコンの販売が想定より下回れば、Windows 10への買い替えが増えるでしょうから、その分、年末商戦は下がることが予想されます。その需給管理については、メーカーと家電量販店、マイクロソフトと緊密に連携をとっていく必要があります。(つづく)