2018年末から一気に認知度を上げたスマートフォン(スマホ)決済サービス。特定のサービスを使って決済すると、決済金額の20%相当がポイントや電子マネーで戻ってくるなどのお得なキャンペーンが好評だ。しかし、気前のいい還元がいつまで続くかはわからない。キャッシュレス推進協議会の福田好郎事務局長は、消費者がスマホ決済を使い続けるには「還元以外の魅力が必要だ」と訴える。
取材・文/南雲 亮平、写真/松嶋 優子
乱立するスマホ決済の行く末
── 「乱立している」とも言われているスマホ決済業界では、昨年末からキャンペーン合戦が続いています。キャッシュレス推進協議会としては、この状況をどのように見ていますか?
スマホ決済のビジネスは、基本的に資本力がものを言います。高還元率のキャンペーンは、ユーザーを増やすためには効果的ですので、現在は静観しています。そんな中でも、さまざまな企業が競争しながら、それぞれの立場で工夫している状態が理想的です。もちろん、ずっとこの状況を良しとするわけではありません。
── 資本対決の末に残るサービスが消費者にとって“本当に良いサービス”なのか、疑問が残るところですね。今後はどのように変わっていくのでしょうか。
将来的には、利便性や付帯サービスで競い合う方向に変えていきたいです。例えば、最近だとスマホ決済に紐づいた来店前注文や事前決済サービスがあります。還元率以外の部分で付加価値を生み出し、導入店舗を増やすような流れになれば、資本を削り合う機会は減るはずです。
── 消費者の立場で言えば、決済についてはSuicaなどの非接触決済が断然使いやすいです。では、スマホ決済ならではの魅力は何でしょうか。
非接触決済に対応するには機器の導入やシステムの開発などにコストも時間もかかるため、中小・小規模事業者にとっては難しいのが現状です。一方、スマホ決済の導入はコード払いであればQRコードを記載した立札を置くだけなので容易です。効率は悪いかもしれませんが、スマホ決済事業者には、非接触決済対応が難しい事業者の開拓を期待しています。
しばらく続く乱立状態 今後増えるのは“お店Pay”
── 7月には新たにコンビニ大手が独自のスマホ決済サービスを開始しました。店舗では、顧客が他社の決済サービスを利用して決済すると手数料が発生しますが、自前の決済サービスを利用する場合は手数料がかかりません。こうしたメリットを生かすために、小売によるスマホ決済参入はまだ増えていきそうですね。
直近1~2年は店舗側が展開する“お店Pay”が増えるとみています。私見ですが、コンビニ独自の決済サービス以外に、クレジットカードを扱っている家電量販店や電鉄系の既存アプリに決済機能が搭載される可能性もあるのではないでしょうか。
── 増えたサービスは、収束していくのでしょうか。
合併していくようなことはないと思いますが、利害が一致すれば、加盟店の相互開放はあり得ます。“使えるところ勝負”は変わらないので、LINE Payやメルペイ、NTTドコモが加盟している「MoPA(Mobile Payment Alliance)」のようなアライアンスが増えていくと考えています。