佐藤 では3代目以降は富の維持のために何が必要かというと、ポイントはたったふたつなんです。ひとつはチャリティーをすること。大衆にお金を配れば、やっかまれずに済む。

もうひとつは、国家の役に立つこと。お金は力になりますから、資産家は当然、国家に警戒されます。納税はもちろんのこと、そのほかにもお国のためになることをいくつもしていれば、目を付けられにくいというわけですね。根本的な考え方はきっと、ネットで炎上しないコツとも近しいと思っているのですが。

津田 佐藤さんはそういったことで、何か意識的にされていることはありますか。

佐藤 私は若い人への学習支援にお金を使っています。ほとんどが大学生ですね。資格試験を受けたいけれどファミリーレストランのアルバイトが忙しくて勉強時間が十分取れないとか、ダブルスクールをしたい大学生だとか。個別に会って話を聞いて、何人かの具体的な問題を処理しています。

成果も上がってきているんですよ。公務員になったり、公認会計士になったり。

津田 そういった若者とはどこで知り合うんですか?

佐藤 私の母親が沖縄出身なので、その関係の、沖縄系ネットワークが中心です。あとは私の講演に来た人で、中学生のときにドロップアウトしてから学校に行ってないという大学受験希望者もいました。

とても頑張り屋なのでなんとかしてあげたいということで、『月刊日本』の副編集長と一緒に勉強を見たら、半年で世界史の偏差値が80くらいになった。いま同志社の神学部に進学して私の後輩になっています。

まあもともと成績がいい人のサポートは比較的簡単だけれど、そうでない人の場合は、ちょっと大変ですね。あとは家に元野良猫と元捨て猫が5匹います。全部訳ありの雑種です。

津田 雑種もかわいいですよね。うちも実家で飼ってます。

佐藤 それから友人との関係で注意をしているのは、自分が友人に勧めた本を渡すときは、お金を取らないこと。「いい本が見つかったから」といって、タダで贈る。原稿はいくつかの例外を除いてタダでは書きませんが。

津田 そうなんですね。勉強になります。

津田大介
1973年生まれ。ジャーナリスト、メディア・アクティビスト。ポリタス編集長。
社会問題からメディアのあり方まで、SNSを利用し新しい情報発信を行う。
主な著書に『情報の呼吸法』(朝日出版)、『Twitter社会論』(洋泉社新書y)、『未来型サバイバル音楽論』(中公新書ラクレ)など。

佐藤優
作家、元外務省主任分析官。1960年生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了。2005年に上梓した『国家の罠−外務省のラスプーチンと呼ばれて』で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。

2006年には『自壊する帝国』で第5回新潮ドキュメント賞、第38回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。世界・経済情勢はもちろん、愛する猫についても語る「知の巨人」。

右肩下がりの君たちへ

著:佐藤優 1,058円

社会の恩恵を感じ難い社会構造となってる今、この閉塞状況を打破するためのヒントを佐藤優と、若き知識人たちが語り合う。

津田大介×佐藤優「情報を見極めること」
古市憲寿×佐藤優「希望を持つこと」
萱野稔人×佐藤優「家族を持つということ」
木村草太×佐藤優「変化の中で生きること」
荻上チキ×佐藤優「いじめについて考えること」