型にはまらない選曲でフロアを盛り上げる
――また映画の話に戻りますと、「あやしい彼女」でも"音楽"が物語全体の大事なテーマの一つになっています。20歳になった節子は夢だった歌手を目指し、彼女の才能に目をつけたプロデューサーにスカウトされます。
DJ SUMIROCK:音楽もよかったですね。懐かしい曲がたくさん流れますよね。
――「見上げてごらん夜の星を」「真赤な太陽」「悲しくてやりきれない」などですね。特に印象に残った曲はありますか?
DJ SUMIROCK:最初に倍賞さんが歌っていた……「東京ブギウギ」かな。「悲しくてやりきれない」を歌ってプロデューサーが節子に目をつけるところなんて、取り上げ方がうまいなぁと思いましたね。私はその当時を知っていますから、違和感がなかったです。こういう曲を知ってらっしゃる方が映画を作られたんでしょうかね。
この映画で使われた曲は、当時は街でしょっちゅう流れていましたよ。いい曲はいつ聴いてもいいですね。今の人が昔のいい曲を知るきっかけになるかもしれません。
――音楽といえば、DJ SUMIROCKさんがクラブでかける曲は「鉄腕アトム」やジャズ、シャンソンなど幅広いですよね。
DJ SUMIROCK:私がDJになるきっかけになったアドリアンという方がイベントを主催しているのですが、もともと彼のコンセプトは、いろんな人に来てもらいたいということなんですよ。
――DJ SUMIROCKさんの選曲が型にはまらないのには、そういう背景もあるのですね。
DJ SUMIROCK:ふふ。みなさん、面白がってるんじゃないですか(笑)。私ね、不安なんですよ。
――不安?
DJ SUMIROCK:私が歳だからみなさんがワーワー言ってくださっているのか、それとも私のプレイが本当にいいからなのか、それがわからないんです。褒められるし、すごいですねって言っていただきますけど、物珍しいから来てくださっているだけなのかなって思ったりするんです。
――年齢で珍しがられているだけなら、何度もイベントに出演してフロアを沸かせるのは無理だと思いますが……実際にイベントにお邪魔しましたが、すごく盛り上がっていました。
DJ SUMIROCK:みなさんが声を出して踊ってくださると、うまくいったのかなって嬉しくなりますね。うまくつなげられたとか、選曲がよかったとか、考えていたことがイメージ通りにあたったときは嬉しいです。
――高揚感が?
DJ SUMIROCK:高揚感はあまりないんですよ。私、そういうのって冷静なんです(笑)。
未知の世界に挑戦するには、失敗を恐れないこと
――(笑)。……ところで、映画の主人公・節子は20歳に戻ったことで新しい道を歩むきっかけを手に入れましたが、DJ SUMIROCKさんは70歳を超えてからDJという新しい道に挑戦されました。新しいこと、未知の世界に挑戦するのは、若くても尻込みしてしまう人が多いと思います。
DJ SUMIROCK:私はもう、そういう性格なんですよね。昔から「あなた心臓ね」って言われていました。「心臓ね」っていうのは、「肝っ玉が座っているわね」ってこと。私も普段はおとなしいんですよ。でもいざ何かしないといけないってときは、他の人よりも早くサッとやる性格なんです。
――うらやましい限りです……。どうすればそうなれるのでしょうか。
DJ SUMIROCK:失敗しても気にしないことでしょうか。最初うまくいかないのは当たり前のことなんですよ。命に関わることだとダメだけど、恥ずかしい思いをするくらいだったら大したことはないんです。私自身、そんな大した人間ではないから、笑われたって大したことはない。そう思えばいいんです。
わからないことも多いですよ。イベントでも場所によって機械の操作もぜんぶ違いますから。
――そういうときはどうされるのですか?
DJ SUMIROCK:わからないことは周りの人に助けてもらいます。そのときそのときで「わかりません」と言って、お願いして教えていただくんです。
――助けてもらうといえば、映画でも節子が泣いている子どもとお母さんにおせっかいを焼くシーンがありますね。
DJ SUMIROCK:ええ。そういうのに気づく人って、年齢関係ないですよね。若い人でも気づく人はちゃんと気づくし。