世界60都市で大ヒットを繰り広げてきた『sutra』が、ついに日本初上陸を果たす。舞台で見せつけるのは、本場中国の少林寺の僧侶による迫力あるダンスとアクロバット。演出と振付を担っているのは、ダンス界のスーパースター、シディ・ラルビ・シェルカウイだ。日本では、『テヅカ』、『プルートゥ』の演出でも知られている。その舞台の主演を務め、ラルビをよく知る森山未來が、今作の魅力を語ってくれた。
『sutra』を観て森山がまず感じるのは、少林寺拳法の迫力だ。「ずっと修行を続けてきた人たちの身体的なパフォーマンスが、とにかく圧倒的な衝撃なんです。少林寺拳法というものをこういう新しいカタチで観て、そのゴージャスさを感じるだけでも、観る価値はあると思うんですね」。
それに加えて強調するのは、ラルビの演出である。「この作品についてラルビと直接話したことはないんですけど、これはラルビが、少林寺やアジアの文化との出会いに対するインプレッションを作品にしていったものではないかなと、僕は感じるんです。ラルビのなかでイメージしたアジアの世界を、少林寺の僧侶たちの身体と木の箱を使った美術で表していく。彼は仏教のことなどについても造詣が深いのですが、一つひとつの配置や動きに何らかの意味合いが絶対あるんですよね。それをすべてわかる必要はないんですけど、どうしてそういう配置や動きになっているんだろうと想像しながら作品と会話していくのは、クリエイターと観客のお互いにとっていい作用になると思いますし。そこまで考えなくとも、ラルビの驚きと喜びがあふれている作品だと思うので、それを単純に楽しんでもらえたらいいと思います」。
『テヅカ』や『プルートゥ』でともに創作していくなかで、ラルビに敬愛の念を抱いていったという森山。「ダンスを見せるということだけでなく、空間を作っていくという考え方が面白く、その思考の柔軟性にもとても惹かれた」と語る。ラルビが作り出すものには、“ダンス”という言葉では括りきれないものがあるというわけである。この『sutra』も同様だ。「ダンス作品の領域は今、どんどん広がっていて、ラルビはそれをより広げたひとりです。この作品も間違いなく、観る人の価値観を広げてくれる力強さを持つもの。きっと新しい扉を開いてくれると思います」。日本公演では特別にラルビ自身が主演する。世界に衝撃を与えたパフォーマンスを体感することで何が発見できるか。楽しみにしたい。
公演は10月1日(土)・2日(日)東京・オーチャードホールにて。チケットの一般発売は6月11日(土)午前10時より。