演奏はギターもドラムもハープもとにかく荒々しくて、歌声も心なしか音量でかめ。そんな混沌の世界を「おっしゃー行く先はこっちだ、ついてこい!」と先頭に立って前へ前へと引っ張っていく、フラッシュライトのように強く発光するメロディ。初めて聴いたのが深夜ラジオの合間で流れてきたときだったのだが、「うわー、え、これチャットモンチー!? なにこれ、うわー、すげー! えー!」と、理屈じゃなく興奮してしょうがなかった。こんなことはめったにない。ある意味とても暴力的だ。聴き手の立場や状況などお構いなしに、一瞬にして感覚を鷲掴みにしてしまうのだから。

歌詞もすごい。歌い出しの<人間はめんどくさい>という一節から、流行り言葉も横文字も常套句も使わず、子どもでもわかる平易な言葉で、ひらめきに満ちたイメージを広げていく。『ハテナ』というタイトルに象徴されるように、この曲でチャットモンチーは明快な答えを用意していない。そのかわり<無限でいたいと思う?>という問いを聴き手に投げかける。アイデアも衝動も整理されることなく、『ハテナ』という楽曲の中に無造作に散らばって、尋常じゃないエネルギーを放射している。そのエネルギーそのものが、彼女たちのいまの「生きっぷり」であり、そのあまりの全力さにグッときてしまう。

昨年9月にメンバーが脱退しギターボーカルとドラムのふたり体制になったことが、現在のバンドのキレっぷりに影響を与えているのは言うまでもないだろうし、この曲の無尽蔵なパワフルさを「バンドの危機を乗り越え新たに掴んだ初期衝動」などと言って、バンドストーリーの延長線上で語ることも可能だろう。しかしもはや『ハテナ』は、そんなところに収まるような音楽ではないと思う。売り物としてキレイに整理された自称・前向きソングの何倍も何倍も、聴き手の生きる力・生きようとする力を呼び覚ましてくれる、チャットモンチーというバンドの「生きっぷり」が生々しく刻まれた『ハテナ』というロックンロールの名曲の誕生を、いまはただ全力で喜びたい。