赤の女王の従者は何者? 描かれなかった裏設定
また、赤の女王の従者として登場する、野菜で形作られた人々にも注目です。
ジュゼッペ・アルチンボルドへのオマージュでしょうか? と聞いたところ、思わぬ設定を聞くことができました。
「その通りで、アルチンボルドは自分の大好きな画家なんだ。あの野菜たちは、映画の中では描かれていないけれど、タイムが赤の女王のために、人材として育ててあげたものなんだ。」
※ジュゼッペ・アルチンボルドは16世紀のイタリア・ミラノ出身の画家。果物、野菜、動植物、本などを寄せ集めた、個性的な肖像画の製作で知られる
完璧な悪役? 新キャラクターのタイムに注目
今作『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』は、アリスとマッドハッターたちだけの物語ではありません。
赤の女王と白の女王、そして赤の女王と、初登場となるヴィラン(悪役)タイムの、キャラクター同士の関係性が、多面的に描かれています。
ジェームズ・ボビン監督が「完璧なヴィラン」と表現するキャラクター、タイムですが、この優しさとも取れる一面を持つキャラクターが、なぜヴィランとして「完璧」なのか?
そこにジェームズ・ボビン監督の、ひいては『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』の価値観が、凝縮されていると感じました。
こちらも要注目です。
鑑賞前に知っておくと楽しい画家たち
また『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』には、赤の女王のお城の中に見られる、だまし絵で有名なマウリッツ・エッシャーのシュルレアリスムの要素や、キャスパー・デイビット・フレンドリッヒのロマンティックな風景表現など、様々な絵画作品からの影響が随所に盛り込まれています。
前作から引き継いだ世界に、こういった新たな創作のエッセンスが入る事で、アリスの世界らしい、ウンダーカンマー(驚異の部屋)のような、蠱惑的な魅力が加わったのではないでしょうか?
『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』は、多面的な物語、しかし万人に理解しやすい語り口は、見る人の世代や、おかれた環境によって、さまざまな世界をみせてくれます。
鑑賞後は、一緒に見た人と “お茶会” をして、意見を交わしていただきたい、そんな作品です。
ぜひ、劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか?
映画『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』
2016年7月1日(金)全国ロードショー