「ムッシュ・キタノは、フランスでは圧倒的に映画人として知られていますが、実はコメディアン、俳優、司会者、そしてアーティストとしての才能もある、ファンタジーにあふれた人。彼なら、誰も見たことのない展覧会を作れるのではないかと思ったのです」
過去には、デヴィッド・リンチやパティ・スミス、村上隆などの展覧会を開催し、その都度高い評価を得てきた、財団の名物ゼネラルディレクター、エルベ・シャンデス氏はこう話す。彼のビートたけしへの思いは、映画『座頭市』を見た時に確信へと変わり、その後、二者の幸せなコラボがスタート。数年後に出来上がったのは、「アートは特別なものではない」というビートたけしの言葉を体現した、アートのアミューズメントパークのような展覧会だった。シャンデス氏によれば、それは「アート、サイエンス、夢などあらゆる領域がリンクし、つながっていく自由な空間」。ユーモア、瞑想、ゲーム、発見、考察、とさまざまな要素が混在するビートたけしの芸術的なアイデアは、区分し、分けることを主としてきた近代的な教育システム、いわばアカデミスムや先入観から観覧者を解放したというのである。
現在、東京オペラシティ アートギャラリーでは、パリでの展覧会とほぼ同じ構成で凱旋展が開催されている。ヨーロッパ人とは逆に、映画人・北野武としてよりも、日頃よりコメディアンやTVタレントとしてビートたけしの姿を見る機会が多い日本人の目に、この展覧会はどう映るのか? 極めて興味深いところである。
『BEAT TAKESHI KITANO 絵描き小僧展
Fondation Cartier pour l'art contemporain』
9月2日(日)まで開催
東京オペラシティ アートギャラリー
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