長らく劇団四季で活躍していた蔡暁強、ヴァルナ国際バレエコンクールで金賞を受賞している吉本真悟、ダンス界のみならずミュージカル界でもひっぱりだこの大野幸人。日本トップクラスの実力を誇るダンサー3人による舞台『Baked Hotel』が9月、東京で上演される。3人に話を訊いた。
物語は、豪華ではないけれど悪くない、少し古い不思議なホテルを舞台に、従業員、客、出入りする業者の人間らがドタバタな騒動を巻き起こすもの。チラシには“ダンス・ショウ”という言葉とともに“スラップスティック”の文字が躍る。「ダンスがメインのお芝居ですが、アメリカのコメディやギャグ漫画っぽかったり、アクション映画っぽかったり……色々な要素がごちゃまぜになったエンタテインメントです」と、作・構成も担う大野が話す。東京公演に先駆け昨年、京都で行われた公演は完売御礼となった。「すっごく、楽しんでやっています」(吉本)、「思い切ってふざけてます」(蔡)とふたりも語るように、笑いの要素も多分に占める。「都会的だけどダサい、大泣きするけど大笑いする…そんな感じです」(大野)。
とはいえ、3人ともスーパーダンサー。ダンスシーンも見どころなのは間違いない。「クライマックスには、15分近いダンスシーンがあります。コメディなんですが、椅子を使ったり、色々なものが飛び交ったりする。そこはすごいことになりますよ」と大野。ちなみにまったく個性の違う踊りをする3人が動きを揃えるのは大変なのでは、と尋ねたところ「そうなんです、リズムの取り方も表現の仕方も違うので、同じ振りでも全然違うものになっちゃう!」と蔡。さらに吉本が「間の取り方、手の角度…ほんのちょっとの違いが大きいんです。でも幸人君が、かなり厳しくダメ出しをするんですよ(笑)」と話すと、「結構、厳しいよね!」と蔡も同意する。ふたりの攻撃を受け苦笑しながらも、「でも、揃えたいんです! そこも今回は頑張ろうと思って」と大野。なんだかすでに3人、楽しそうである。
お互いの印象については「シャオチャン(蔡)は驚愕の人。ジャンプや柔軟性、身体能力が本当にすごい。真悟さんはムードメイカーですね。いるだけでその場が明るくなる。あと、いじられ役(笑)」(大野)、「幸人くんは器用でスタイリッシュ。しかも今回の脚本も書いているんですが、幸人君が本を書いたということにまずびっくり、しかも読んだら面白くて。こんな才能あったんだね」(吉本)とのこと。大野の脚本もだが、本作で初めて本格的なセリフを喋ったという吉本も、ユニークなキャラクターに扮する蔡も、それぞれがいわゆる“ダンサー像”のイメージを軽々と飛び越えている。「ダンサーってこんなことも出来るんだ、今のダンサーってすごいね、というところまで挑戦したい」(蔡)、「ダンスでしか伝わらない感覚と、言葉だからわかる面白さ、そのふたつが同時に来るステージです」(吉本)。3人の才気溢れるステージ、必見だ。
公演は9月17日(土)から19日(月・祝)まで、東京・スパイラルホールにて。チケットは発売中。