レイを演じたデイジー・リドリー(撮影:堤博之)

 『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(77)から42年。そして、シリーズの新たなるサーガの始まりとして製作された『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15)から『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(17)を経て、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(12月20日全国公開)で、遂にスカイウォーカー家の物語が完結する。新3部作のヒロインであるレイを演じたデイジー・リドリーに、完結編となった本作への思いを聞いた。

-今回が完結編ということで、どんな思いで撮影に臨みましたか。

 特に気負いはなかったです。撮影前の1年間が結構忙しかったので、半年間休みを取りました。家でゆっくりすることができたので、地に足を着けて、リラックスすることができました。事前に特別なことはしませんでしたが、メンタル的にも、肉体的にもヘルシーな状態で撮影に入れるようにしました。

-『~フォースの覚醒』以来の顔合わせとなった、J.J.エイブラムス監督は、デイジーさんの変化について「ライトセーバーが軽くなったみたい」だと話したそうですが、逆に、エイブラムス監督が変化したと思ったところはありましたか。

 不思議だったのは、J.J.は大きなプレッシャーを抱えているはずなのに、『~フォースの覚醒』のときに比べると、撮影現場でとてもリラックスしているように見えたことです。うまく隠していたのかもしれませんが…。『~フォースの覚醒』のときに、彼がよく口にしていたのは「キャスティングが大変だった」ということでした。ですから、誰と誰とのコンビネーションがうまく作用するのかが分かった今は、みんながスムーズに仕事をすることができたのだと思います。彼はとてもオープンな人で、コラボレーションを大切にしてくれます。今回、改めてそう感じました。

-では、大役のレイを演じ切った今の気持ちは?

 レイ役に起用されたことと、撮影現場で素晴らしい時間を過ごせたことは、本当に幸運だったと思います。これは、一緒に仕事をしたみんながすてきな人たちばかりだったからです。また、私自身がレイというキャラクターを信じることができなければこんな気持ちにはならなかったと思います。出演したことをきっかけに、さまざまなものとつながったり、いろいろな場所に赴くことができました。長きにわたったその旅が終わることは不思議な感じがします。その期間を凝縮して考えたときに、『スター・ウォーズ』の中の自分と、普段の自分を切り離すことが難しいほどになりました。公私にわたって本当に美しい経験をさせてもらい、それを自分の人生に加えることができたことは、大きな喜びです。撮影中は、みんなと家族のような関係を築くことができ、その中で、安心しながらいろいろなことを試すことができました。素晴らしい仲間と共に、レガシーの一部となって作品に関われたことがとてもうれしかったです。

-亡くなったレイア姫役のキャリー・フィッシャーからは何か学びましたか。また、レイ役に応用した部分はありましたか。

 具体的な言葉ではなく、そこに一緒にいることで学んだことの方が多いかもしれません。「キャリー、いろいろと聞きたいことがあります」という会話はしたくなかったので、クールな感じを装いました。ただ、振り返ってみれば、キャリーにも、マーク(・ハミル)にも、ハリソン(・フォード)にも、もっといろいろと聞けばよかったと思います。例えば、「『スター・ウォーズ』に関わってどうだったか」「生活にはどんな影響があったのか」「撮影後はどんなふうにして連絡を取り合っていたのか」「撮影現場はどんな雰囲気だったのか」…。 一度キャリーにインタビューをする機会があって、そのときに彼女が「みんなが着なくてもいいように、私が金色のビキニを着たのよ」と言ったのを覚えています。『スター・ウォーズ』の女性キャラとして、彼女はまさに先駆者でした。彼女の後に続いた私たちのために道を切り開いてくれました。彼女がいてくれたおかげで、私は何かを成し遂げることができました。自分が発する言葉には理由がある、と思うことができました。

-では、もし後輩に「『スター・ウォーズ』に出演してみてどうでしたか」と聞かれたら、どう答えますか。

 スタッフやキャストのみんなが言っている「最高の時を過ごすことができた」というのは真実です。ただ、『スター・ウォーズ』後の人生はまだ経験していないので、今は言葉にはできませんが、30年後も、みんなと今と同じような友情が続いていてほしいと思います。

-予告編を見ると「トゥギャザー」という言葉が出てきたりして、“仲間や友”という部分が強調されているように感じましたが、それが今回の大きなテーマの一つなのでしょうか。

 その通りです。レイは良い資質をたくさん持ったヒーローですが、それはフィン(ジョン・ボイエガ)もポー(オスカー・アイザック)も同じです。ただ、レイはフィンなしでは力を発揮することはできないし、フィンもポーがいなければ駄目です。つまり、ライトサイドの側にいるレイたちは、そうした関係性を持っています。そこが『スター・ウォーズ』の素晴らしいところです。今思いつきましたが、逆にカイロ・レン(アダム・ドライバー)は一人なんですね。彼は、その孤独や悲しみから湧く怒りを抱えているのかもしれません。反乱軍のレイたちは互いを頼ることができるし、大儀のために一つにまとまっているのですから。

-レイは謎の多いキャラクターですが、今回、彼女の両親については明らかになりますか。

 明らかになります。『~最後のジェダイ』が終わったとき、レイが学んだことについて、演じた私自身は満足していました。ただ、そのときに言われた言葉に対して、彼女は答えを求めているのではないかと感じました。彼女は前に進むために、失ったものについて知らなければならないと思いました。それを模索した答えが本作で明かされます。ただ、『スター・ウォーズ』の美しさは、血のつながった家族の物語でありながら、自分が誰かを選び、家族や友を作っていくという物語でもあるところだと思います。レイにとって、初めて出会った友人がフィンであったし、愛や友情でつながっていく関係が、人間にとってどのぐらい大きなものであるのかを知ることが大切なのだと思います。

(取材・文/田中雄二)