「黄昏」稽古場より

誰にでも訪れる老いと、家族の絆をテーマにした舞台『黄昏』が1月16日(木)から紀伊國屋ホールで上演される。

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1978年のブロードウェイ初演以来(原題は『On Golden Pond』)、日本を含む世界各地で上演され続けているアーネスト・トンプソンの戯曲。1981年にはヘンリー・フォンダ、ジェーン・フォンダ、キャサリン・ヘップバーンの共演で映画化され、第54回アカデミー賞主演男優賞、主演女優賞、脚色賞などを受賞した。シーエイティプロデュースでは、文学座の高瀬久男の演出のもと、2003年に初演され、2006年再演(板垣恭一との共同演出)、2018年には鵜山仁による新演出で再再演されている。

舞台は、アメリカ・メイン州、美しい湖ゴールデン・ポンドの岸辺にたたずむ別荘。偏屈な性格で最近老いを感じ始めたノーマンと、ノーマンの10歳年下の妻・エセルのふたりがひと夏を過ごすために、別荘へやってくる。そんなふたりのもとに、42歳になる娘のチェルシーから手紙が届く。父との確執から疎遠になりがちなチェルシーだが、8年ぶりにゴールデン・ポンドを訪れ、ボーイフレンドを連れてくるといって…。

村井國夫の舞台降板に伴い、ノーマン役を演じるのは、文学座の石田圭祐。また、これまで初演からエセル役を演じてきた八千草薫が昨年10月に亡くなり、今回は高橋惠子がその跡を継ぐ。娘のチェルシーを瀬奈じゅん、ビルを松村雄基、ビリーを若山耀人、そして郵便配達夫のチャーリーを石橋徹郎が演じる。

昨年12月下旬に東京都内で行われた稽古では、年季を感じさせる木造の別荘の内装が建てこんであり、1幕の第三場、ノーマンが80歳の誕生日に、チェルシーが恋人のビルと、13歳になる彼の息子ビリーとともに別荘へやってくるシーンが公開された。

娘に会えた嬉しさと裏腹に天邪鬼な受け答えをしてしまうノーマン。父の体調を気にしているのに、それを素直に表せないチェルシー。その間に立って両者を気遣い、見守るエセル。程よい緊張感が漂う稽古場。本番まであと1か月ほどだったが、過度に焦ることなく、各々が淡々と目の前の芝居に向き合い、稽古に取り組む姿が印象的だった。

初演から40年以上経っている戯曲だが、家族のあり方、そして、老いとの向き合い方は現代でも十分通ずるテーマだろう。実力派の俳優たちが紡ぐ、家族の物語。お見逃しなく。公演は19日(日)まで。チケット発売中。

取材・文:五月女菜穂