小川絵梨子演劇芸術監督、大野和士オペラ芸術監督、吉田都次期舞踊芸術監督

新国立劇場の2020/2021シーズンラインアップ発表会見が1月8日に行われ、演劇部門の芸術監督の小川絵梨子、新たにバレエ・ダンス部門の芸術監督に就任する吉田都らが出席した。

英国のロイヤルバレエ団で長年にわたりプリンシパルとして活躍してきた吉田監督は「(新国立劇場の)20年以上の積み重ねを大切にしつつ、新たなチャレンジをしていきたい」と意気込みを語る。就任1年目は『白鳥の湖』(新制作)で幕を開け、『くるみ割り人形』など古典作品が続くが「古典をすることで基礎の大切さ、テクニックの向上、スタミナ・筋力の強化ができる」とベース部分の底上げを図る。

一方で「世界的にコンテンポラリーの比重が大きくなっていて、(古典とコンテンポラリー)両方、踊れることが求められる」とも。また「振付家の育成・発掘」も大きな課題とし「なぜロイヤルバレエ団が世界3大バレエ団と呼ばれるようになったか? 優秀な振付家を育てて素晴らしい作品を作ったから。新国立劇場から世界に発信できる作品を作りたい」と“世界”を見据えての育成を掲げる。

「吉田都セレクション」と銘打った公演では、世界的に活躍する振付家デヴィッド・ドウソンがバッハのピアノコンチェルトに振り付けた『A Million Kisses to my Skin』、ピアソラのタンゴとバレエを融合させた『ファイヴ・タンゴ』などを上演する。

演劇は、パリのオデオン劇場からの招聘作品で、世界的演出家イヴォ・ヴァン・ホーヴェ、主演に仏の国民的女優イザベル・ユペールを迎えての『ガラスの動物園』で幕を開ける。また、2009年より続いてきたシェイクスピアの歴史劇シリーズは『リチャード二世』で遂に完結を迎える。

「人を思うちから」と銘打って日本で愛されてきた名作3作を届けるシリーズでは、第1弾で三好十郎作の『斬られの仙太』を上村聡史の演出によりフルオーディションで、第2弾では世界的人気を誇る故・今敏監督によるアニメーション映画を新国立劇場初登場の藤田俊太郎の演出で舞台化する『東京ゴッドファーザーズ』を、そして第3弾では小川監督自身の演出で井上ひさしの名作『キネマの天地』が上演される。小川監督は同企画について「損得とか正しいとか政治的に合っているとかじゃなく、根本に“人を思うちから”をみんなが持っているはず。それを改めて感じてもらえたら。人の“情”のお話であり、3作とも欧米では絶対に書かれない作品だと思います」と言葉に力を込めた。

取材・文/黒豆直樹