音とアレンジと言葉で一個になるのが究極の理想
イマヤス:『Tour』はバンドマンとしての歌ですよね。
恭一:これほんとわかるやろー! 景色まで全部出るやろ? 問題はバンドマン以外わかんのかなっていう(笑)
イマヤス:こういう曲って、バンドマンって書かないといけない曲ですよね。すごく染みます。これ、自分の見てる風景だけを歌ってるんですよね。景色だけで自分の気持ちっていうのがひとつも書かれてないのにすごく伝わってくるっていうね。あー、ここでこういうこと思ったんだろうなとか、これは高速の距離が長~い静岡で書いたのかなとか。
恭一:うん、東名だよね、これ(笑)
イマヤス:『屋上』でもそう思ったんですけど、恭一さんの見てる景色って、普通の人が見てる景色と違うんじゃないのかなって感じる時があって。恭一さんの感じ方にはまっちゃうと中毒性があって、その景色が自分の中にも浮かんでくる。でも、たぶん恭一さんが見てるのは違うんでしょうねえ。
恭一:アルバムを出した後にお客さんや取材で感想をもらう度に、あーそういうモノが見えたんだって逆に楽しいよね。そうすると自分の中ではこのくらいだった広さの曲が、どんどん広くなっていくんよね。
イマヤス:言葉に関して言うと、今の若いバンドのコたちって説明しすぎちゃうと思うんですけど、恭一さんのは・・・。
恭一:しなさすぎ。ガハハハ。
イマヤス:(笑)その行間の感じがすごくいいんですよね。一行の白身の部分ていうか、その書いていないところにちゃんと意味があるっていうね。
恭一:それで思い出したんだけど、エンジニアの松本大英と詞のからみも含めて歌入れをやってるんだけど、大英が言うのはまさにその白身の部分のとこで。
俺の詞ってのは基本的に説明が少ないから、あえて最初は入れてる時もある。だけど大英が「この説明いらないんじゃない?」ってなって。俺の世界に合わないって。まあ、その反対もあんだけどね。説明しなさすぎて全くわからない時もあるから、そういう時はもうちょっとわかるようにもするけどね。
だから音とアレンジと言葉で一個になるのが究極の理想なんだよね。映画だったら映像だけで言葉はいらないとか、小説だったらその情景で浮かぶとかあるけど、音楽は言葉も音もあるからねえ。
イマヤス:だから説明しすぎちゃうっていう事もありますもんね。
まだなんにも到達してない感があるんよ
イマヤス:ちなみに恭一さんの中ではプロデュースとかっていう事よりも、生涯現役として自分の作品をやってくっていう気持ちが強いですか?
恭一:そうね。ソロでやるようになって。『ピクチャーミュージック』からは20年になるけど、一旦お休みして再びやりだしてから10何年か。まだなんにも到達してない感があるんよ。ずっと確実に石は投げ続けてはいるんやけど、当たってんだけどなんか壊れてもないし、やっつけてもいない感があるからそういうのが悔しいのかなー。死ぬ時に、「あー『パヤパヤ』しか人は知らないのかなあ」って死にたくないなって思うよ(笑)。
別に売れたくないわけでも、売れたいって思ってるのとも違うけど、曲を知られたい、聴いて欲しいっていうね。結局自己満足でやってるわけじゃないからね。聴いてくれてる人がいるからやってんだろうなって思うしね。
イマヤス:20年の間に自分で変わったなって事はありますか?
恭一:だんだん歌う事に対しての感じ方ってのは変わってくる。歌でなにかを伝えたいって事もどんどん出てくるし。俺にはまあ、ギターっていう武器がもうひとつあるけど、アコギの時とかは特に歌って事になるから、昔よりは歌ものが増えてきたよね。
イマヤス:実は弾き語りが合う曲がすごく多かったっていうのもあるんじゃないですか?
恭一:うん、なんとかしてる(笑)ただ、なんともならん曲もある。
イマヤス:これからまた更に次のアルバム期待しちゃいますね。
恭一:今は考えたくない。できれば今、俺『STEREO 8』一番聴きたくないアルバムだもん(笑)。でもツアー前だから覚えるために聴いてる。
イマヤス:そう、そしてね、僕、ずーっと思ってるのは恭一さんほど擬音がかっこいい人はいないなっていうね。「ダー!!!」とか「ガー!!!」とか。
恭一:たぶん仮歌詞がでたらめ英語のとき、擬音とかばっかりでできてるんじゃないの(笑)
イマヤス:『ラオラウ』は集大成でしたね。
恭一:これね、久々にスタンダードなロックンロールの曲なんだけどね、なんかそう聴こえんやろ?
イマヤス:ほんとそうなんですよね。ロックンロールなんだなって思うんですけど、曲が始まるとやっぱり恭一さんなんですよね。いー具合にふざけてて。あ、ふざけてるって悪い意味にとらないでくださいね。
恭一:バンドで録ってる時はもっと露骨にロックンロールだったんやけどね、や~めた!ってなって(笑)で、こんな感じになったんだけど。
イマヤス:この曲はライブですごい事になるな、って思います。
恭一:バンドマンならではの感じ方ってあったりするよね、そういうのってね。