稽古場の模様

30年以上連載される人気ボクシング漫画の舞台化『リアルファイティング「はじめの一歩」The Glorious Stage!!』が、 1月31日(金)から2月9日(日)まで品川プリンスホテル ステラボールで上演される。リング上のボクシングバトルにより、ボクサー達の情熱、戦い、葛藤が浮かび上がる。その稽古場にひと足早く伺った。

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この日は、主人公・幕之内一歩(後藤恭路)と、「浪速のロッキー」の異名を持つ千堂武士(松田凌)の試合シーン。青のグローブの後藤と、赤のグローブの松田が、互いの動きを合わせ何度も確認する。ファイトコーディネイトを担当する冨田昌則が、『はじめの一歩』の漫画を片手に動きを指導する。松田が撃てば、後藤が大きく後ろに下がる。実際にヒットしてはいないので、攻撃された方の反応が大きければその衝撃は大きく見える。

後藤は原作の大ファンでシュートボクシングの経験を持つ。筋肉と滑らかさのある身体が、リング上でしなやかに動く。本作が本格的なデビュー作となる後藤。緊張感がありつつも落ち着いた様子は、一歩の穏やかな闘志と重なる。対する松田のキレのあるパンチと、稽古に向かう前のめりの姿勢は、勝つことを熱望する千堂の鋭さをと思わせる。衣裳もメイクも整っていないけれど、すでに漫画から出てきたような佇まいだ。ふたりの息を合わせるための動き合わせが、ここから2時間行われた……

その間、一歩と千堂の試合を見守るほかのキャスト達は、同じく奮闘するリング上の後藤と松田を真剣に見つめる。時には、セリフの確認を一緒におこなったり、スマホでふたりの動きを撮影して本人達に見せることも。リング上のふたりだけで創っているわけではない。舞台上のすべての人がそのシーンを創っている。その舞台横では、一歩の永遠のライバル・宮田一郎役の滝澤諒が鏡の前でシャドウボクシングをしていたり、衣裳スタッフや音響スタッフなどが作品のために真剣に働いている。

一歩と千堂のシーン以外でも、キャラクターによって動きのクセが異なる試合シーンが本舞台の見どころのひとつだ。それぞれの性格がよく出たボクシングの振りに音楽が重なり、垣間見える人間ドラマが試合の臨場感を盛り上げる。

原作の森川ジョージは「登場人物全員が主人公です」と言っているそう。実際のボクシングも同じですべての人に役割があり、会場の熱気が完成する。ここに観客が入って試合のゴング……もとい、開演のブザーが鳴るのが待ち遠しい。

取材・文・撮影:河野桃子