お尻が不快で泣いてもオムツを替えてもらえない、お腹がすいてもミルクをもらえない、お風呂にも入れてもらえない、具合が悪くても病院に連れて行ってもらえない……などです。
こうなると、愛着形成がされません。
ところが、このような明らかなネグレクトでなくても、ごく普通の家庭内で起こることもあります。
いくら泣き叫んでも抱っこしてもらえない、親がスマホやゲームに夢中で笑いかけたり話しかけることをあまりせず、淡々と機械的に世話をする状態です。
すると赤ちゃんは本能的に“泣いても無駄である”と感じ、親の手を煩わせないおとなしい赤ちゃんになります。いわゆる“サイレントベビー”の誕生です。
子ども時代を引きずる人々
小さいうちは“おとなしく育てやすい子”ですが、幼稚園、小学校に入学してから問題行動を起こすようになります。
初めての集団生活の中で友達を叩くなど多少の喧嘩は誰しもありますが、その衝動的・破壊的行動がいつまでも止まず激しくなります。
母親から得られなかった愛情を他の大人に求めて、保育士が他の子に関わっているとそれを妨害するように机をひっくり返したり、物を壊したりすることもあります。
表面的なものは収まっても、大人になってから、次のようなケースも起こります。
例えば…
- 特定の人と親密な関係が築けない。
- 恋愛で恋人が離れていかないようにわざと相手を困らせるようなことをしてしまい、失敗する。
- 人と親しい関係になるのがわずわらしいと考える
- 他人からの評価を異常に気にする
- 自分が嫌いで自己肯定感が低い
- 人に頼ったり甘えることができない
- 他人にSOSを出して助けを求めることができない
- 自分の気持ちは押さえて相手ばかりに合わせてしまう
- 拒否されたり傷つくことに敏感
- 嫌われないかといつもビクビクしている
- 見知らぬ人にも近寄りすぎる
これらは幼い頃に親から愛情を与えられなかった経験が、他人との関係性にまで影響を及ぼしている例です。
発達障害と愛着障害の違い
発達障害とは
これは愛着障害とは全く違う概念です。これらを差します。
- 学習障害(LD)
- 注意欠如/多動性障害(AD/HD)
- 自閉症スペクトラム(ASD)
愛着障害は生まれてからの養育環境が原因で起こりますが、発達障害は生まれつきの脳機能の障害で、親の養育態度や家庭環境で起こるものではありません。
例えば“自閉症”は人と関わることが苦手、言葉が遅れるなど愛着障害ととても状態が似ていますが、親の愛情不足や言葉がけが足りないなどの環境要因で起こることはありません。
どんなに抱っこし、言葉をたくさんかけたとしても自閉症は自閉症なのです。それは年齢が上がっても同じことです。