LGBTを含む性的少数者(=セクシュアル・マイノリティ)(以下、LGBT層と表記する)の割合は、全体の8.9%という調査結果が、電通ダイバーシティ・ラボによって発表されました。
8.9% というと、1クラス(40人)に4人弱はいるということになります。

もしも自分の子どもが自分の性のあり方に悩んでいたら、と考えたことはありますか?

今後、子どもが自分の個性を獲得していく年齢にさしかかったとき、親としてありのままの子どもを受け入れられるかどうかは重要な問題です。

それに、これからの時代は多様な他者と嫌でも協働していくことが求められます。子どもがLGBT層でなくても、LGBT層の人たちと仕事をしていく可能性は、今までの比ではないほど高いでしょう。

性の多様性について考えることは、これからの子育てと密接に関わってくるのです。

もしも子どもがLGBTだったら

LGBTという言葉を、どこかで聞いたことはあると思います。LGBTとは、L(レズビアン)、G(ゲイ)、B(バイセクシャル)、T(トランスジェンダー)という4つの頭文字を並べた言葉です。

ただし、上記の4タイプだけがLGBTに当てはまるわけではなく、要はひとの数だけ考え方や感覚が異なるのと同じで、LGBT層(と呼ばれる人たち)の数だけちがった性のあり方があるということだけ、ここでは覚えておいてください。

LGBT層は1クラス(40人)に4人弱はいることになると冒頭で書きましたが、もし自分の子どもがその1人だったら、と考える人はあまりいないのではないでしょうか。

さらに、そう考えてみたとき、受け入れられる親もまだ少ないようです。

「自分の子どもがだったら同性愛者だったらどう思うか」という広島修道大学の調査では、「嫌だ」が45.6%、「どちらかといえば嫌だ」が26.8%という、半数以上の親が受け入れられないという結果が出ているのです。ちなみに「嫌ではない」は11.7%でした。

ですが、子どもの立場になってみてください。

自分がLGBT層だと思った子どものほとんどは、自分が周囲の人と違うことに、アイデンティティーを揺るがすほどの罪悪感を覚えるのです。

数年前には、男子大学院生が友人グループにアウティング(ある人のセクシュアリティを本人の同意なしに言いふらすこと)したことを苦にして自殺するという事件がありました。

もしも自分の子どもが自殺したら、親は悔やんでも悔やみきれないのではないでしょうか。親として、何かできたのではないかと考えてしまうと思います。

こういった事件を自分事として考えておくことは、我が子を失う悲劇を防ぐことにもつながります。

子どもを見ていてもわからない?

親は誰よりも子どもを見ていますよね。特に子どもが小さいうちは、嘘をつけばなんとなくわかりますし、本当は嫌なのにそう言わないときもなんとなくわかるもの。

ですから、ちゃんと見ていれば、親には子どもがLGBT層だとわかるのではないかと筆者は思っていました。ところが、小さいうちからLGBT層であるという自覚がはっきりしていることは少ないようなのです。

今回、LGBT層に該当するEさんというゲイの男性にお話を伺うことができました。

Eさんによると、幼少期は「普通に女の子が好きだった」とのこと。その後、中学2年くらいのときから「だんだん自分は他の男子とは違うのではないか」と思い始めたといいます。

Eさんの自覚の年齢は、宝塚大学の日高庸晴教授などによる「ゲイ・バイセクシャル男性のメンタルヘルスに関する調査」の結果にも通じるものがあります。

調査によると、自分がゲイだとなんとなく自覚した年齢は平均で13.1歳なのだそうです。

その年齢といえば反抗期の真っ只中。なんでも親に話す時期は過ぎ、親にしてみたら「我が子が何を考えているのかわからない」時期です。子どもが性のことで悩んでいることにも気づかなくても、仕方ないかもしれません。

追い詰められる子ども

LGBT層にかぎりませんが、親が子どものためによかれと思ってすることは、時に子どもにとって苦痛を強いることも少なくありません。

Eさんはもともとインドア派で、室内で遊ぶのが好きな子どもだったそうです。ところがEさんの母は、「強く育てるため」Eさんに剣道をやらせます。Eさんはそれが嫌で仕方なかったのだとか。

同じ頃、しぐさをからかわれたりして、いじめが始まりました。ちょうどその頃、テレビの人気お笑い番組で同性愛者のキャラが出てきたこともいじめに拍車をかけたといいます。

いじめは小学校高学年から中学まで続いて「地獄だった」とEさん。部活でも塾でもいじめられ、学校に行きたくないと両親に訴えますが、それは許されなかったそうです。

「親にとって、学校は行くものでした。この頃はいちばん自殺願望がありましたね」

「いのちリスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」の調査(2013年)では、およそ7割のLGBT層の人が子ども時代になんらかのいじめや言葉の暴力を経験していることがわかっています。