──その後、ボーカルプロジェクト「SawanoHiroyuki [nZk](サワノヒロユキヌジーク)」を始動させたきっかけは?
澤野「それまでにもサウンドトラックの中でボーカル曲をフィーチャーして作ることはあったのですが、より歌物の楽曲を追求してやってみたいなと思ったのがきっかけです。今から6年前になりますね」
──「進撃の巨人」や「甲鉄城のカバネリ」など数々の名作アニメの劇伴音楽を手掛けていらっしゃいますが、中でもアニメファンに根強い人気があるのが「機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)」。ガンダムは以前からお好きでしたか?
澤野「高校生のころに見ていました。見るようになったきっかけは作曲家の先生の勧めなんですが、最初はガンダムの見方がわからず…初代の後にZガンダムがあると知らずに「シャアが出てくるんだから次は逆襲のシャアだろう」と作品を飛ばして、内容がわからなくなったくらいで。
そのくらいの知識だったこともあって、ガンダムの音楽を担当することになっても、それまでのガンダムの曲を聴いたり、意識することはありませんでした。
ただ、作品は見ていなかったんですけど、菅野よう子さんが好きだったので、菅野さんの曲が聴きたくて「∀ガンダム」のサントラだけは持っていました」
──それは意外です! Aimerさんのボーカル曲はもちろん、戦闘シーンのBGMなど曲を聞くだけで泣けるというファンもいますが?
澤野「ありがたいですよね。作品の力も大きいですよね。それは劇伴音楽ならではだと思います」
──ガンダムに限らず、劇伴音楽を作るときに前作は意識しないのですか?
澤野「しないですね。似てきちゃうのも嫌だし、寄せたと思われるのも嫌だし。意識しないように、あんまり過去のものを調べるってことはしないです。ガンダムに関しては、制作が終わった後、過去のサントラを買いあさって聞きました」
──曲作りはどのように進めていますか?
澤野「毎日仕事場に行ってパソコンの前に座ってDTMを立ち上げて、劇伴の場合は作品の制作サイドと打ち合わせた音楽メニュー表というのがあるので、それに沿って作っています」
──淡々としている? 湧き上がってくるものとか、そう言った話は?
澤野「湧き上がるものは、どうかな〜(笑)。サウンドトラックもボーカル曲も同じく、曲を作ることが日常なので、即興演奏をよりブラッシュアップしていくような作業なんですよね。湧き上がるっていうと大げさかな。
よくアーティストの方で「降りてくる」と言う方がいらっしゃいますけど、僕はないですね。その感覚はわからないです」
──歌詞も印象的ですが、どのように書いているのでしょう?
澤野「抽象的なフレーズが多いんですよね。でも、自分と無関係なことは書けなかったりするので、自分が日々感じていることや思っていることを書いています。
作品のタイアップだったりすると作品内容に紐づけたりしますが、自分なりに好きな言葉を重ねていくという感じですね。
作品の原作漫画も読みますが、深く読み込んでこのシーンとリンクさせようとかそういう意図はないですね。
原作通りの出来事なんて自分の実世界ではなかなか起きないので、例えば主人公が打ちひしがれて立ち上がるシーンだったら、普段の自分のネガティブになりそうな瞬間、それでも這い上がっていかなきゃって感情をリンクさせて言葉を選んでいきます」