音楽劇『君よ生きて』東京公演が2月22日(水)に開幕する。本作は、第二次世界大戦の終戦直後にソ連によって行われた日本人の「シベリア抑留」と、抑留地からの帰国である「引揚」を物語の主軸に、台詞・歌・音楽・ダンスを交えて届けるオリジナル音楽劇。2014年に初演され、戦後70年を迎えた2015年には全国ツアーも行った人気作で、元劇団四季メインキャストの望月龍平が演出を手がける。
望月と、楽曲提供・音楽監督として初演から参加しているユウサミイに話を聞いた。
物語は、現代に生きる20代のトモキが、亡き曾祖父・善吉に誘われ、第二次世界大戦の終焉直後に起こった悲運ともいえる「シベリア抑留」の過酷さを体験する、というもの。望月は「恥ずかしながら僕自身、“シベリア抑留”や“引揚”のことを詳しく知りませんでした。この作品をやることになって体験された方のお話を聞いたり、文献を見たり、舞鶴引揚記念館の館長の想いを知っていくうちに『これは伝えていかなきゃいけない』という使命感が掻き立てられたんです」
音楽劇である本作。「シベリア抑留」というシリアスなテーマへの観客の構えた心を溶かすような音楽が印象的だが、それを手掛けるのがミュージシャンのユウサミイ。そもそも音楽劇で表現する理由も「サミイさんとの出会いが大きい。サミイさんの音楽のバイブレーションは作品にエネルギーを与えてくれるんです」(望月)という人物だ。
ユウサミイは「僕がこの舞台の音楽監督としてエンターテインメントの部分をまとめあげていくのも使命感に近いものです。この作品で伝えたいことを『重い』と感じてしまう人がいるのは事実。そこを少し届けやすくなるように、ミュージシャンとしてそういった部分にフォーカスしながらやっています」と、本作にかける想いは熱い。ミュージシャンとして活動する自身の楽曲が作品に組み込まれ表現されることには「何度稽古してても、『ここでこの曲のこの部分を持ってきたのか』と驚きます。これは脚本のまき りかの天才性ですね」と笑顔。
今回、望月は本作に初めて出演し、トモキを演じる。望月の芝居は「もうやり放題ですよ(笑)!(Wキャストで演じる)萬立(雄一)がいいので、なんとかしなきゃと思ったんでしょうけど、『そんなセリフ、台本にねえぞ!』って(笑)」(ユウサミイ)。さらに注目したいのは、セットのある変化が。「キャストの芝居にも変化をもたらしています。今回の東京公演のみの変化なのでぜひ観ていただきたいです」(望月)。
「リピーターが多い舞台なので、まずは一回観てもらえれば!」(ユウサミイ)という公演は2月22日(水)から26日(日)まで、東京・天王洲 銀河劇場にて。
取材・文:中川實穗