写真:北村大樹/アフロスポーツ

100mでは08年北京五輪の記録を上回る58秒90を出し、200mは非高速水着世界歴代1位の2分08秒00を出した今年4月の日本選手権。北島は大会期間中、こんな言葉を漏らしていた。

「200mの方がチャンスがあると言われている中でも、どうしても『100mでも勝負してみたい』という気持も諦めきれないんです。これまでの五輪を連覇してきたが、100mに関しては毎回簡単に勝ってきた訳ではない。いつも強い選手がいて、それに追いつきたいという気持でやっていましたから……」

昨年の世界選手権で北島は、泳ぎを修正した200mこそ銀メダルを獲得したが、最初の100mでは前半の50mを27秒20という驚異的なハイペースで入って58秒71を出したアレクサンダー・ダーレオーエン(ノルウェー)に敗れていた。しかも、予選と準決勝では59秒台を出しながら決勝では彼のスピードに焦ってしまい1分00秒03で4位と、自分の力さえ出させてもらえなかった完敗。ロンドンでどう戦おうかと途方に暮れるほどのショックを受けた。

だが北島の真骨頂はそんな敗戦のショックさえ、自分が進化するためのモチベーションに変えられるという心の強さだ。