(左から)、柄本弾、川島麻実子、上野水香、ルイジ・ボニーノ(振付指導)、斎藤友佳理(芸術監督)、ジリアン・ウィッテンガム(振付指導) 撮影:Kiyonori Hasegawa (左から)、柄本弾、川島麻実子、上野水香、ルイジ・ボニーノ(振付指導)、斎藤友佳理(芸術監督)、ジリアン・ウィッテンガム(振付指導) 撮影:Kiyonori Hasegawa

東京バレエ団はこの秋、〈20世紀の傑作バレエ〉と題した公演で初めてローラン・プティ(1924ー2011)の作品に取り組む。ビゼーの音楽に振付けられた傑作、『アルルの女』だ。このほど振付指導のルイジ・ボニーノらを迎えての公開リハーサルおよび記者懇親会が開催され、ボニーノはじめ、斎藤友佳理芸術監督、主演の上野水香、川島麻実子、柄本弾が公演への思いを語った。

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懇親会冒頭から「『アルルの女』についてだね! この作品は実にディープで、受け取ることが難しいところがあるんです」と熱く語りはじめたボニーノ。婚約者がありながら、別の女性の幻影に心を奪われ、次第に正気を失っていく青年フレデリと、彼に献身的な愛を注ぐ婚約者ヴィヴェットの悲恋を描く作品だが、とくに終盤のフレデリのソロは、見る者の心をこれでもかと激しく揺さぶる。「世界じゅうで上演された、素晴らしい作品」と、愛情たっぷりだ。

「35年間プティと一緒にいて、彼にすべてを学びました。最初は『コッペリア』の兵士役でしたが、始めた瞬間、恋に落ちました。ステップ、音楽性、感情、愛、ユーモア……。やりたいと思っていたまさにそのものだ、と。彼が亡くなって本当に寂しいし、こうして指導することは責任重大です」とボニーノ。稽古場では、コール・ド・バレエの指導を担うジリアン・ウィッテンガムとともに、実に緻密で、妥協のない指導を繰り広げた。

初日と3日目に主演する上野は、昨年秋、モスクワでの〈クレムリン・ガラ〉でこの作品の抜粋を踊っている。パートナーは今回と同じく、イタリアの貴公子として名高いロベルト・ボッレ。この上演が今回の取り組みに繋がったと、斎藤芸術監督は話す。「求められるのは、99パーセントが“内面”。ダンサーたちには、この作品を通して変わっていってもらいたいのです」

牧阿佐美バレヱ団在籍時よりいくつものプティ作品を踊ってきた上野だが、「以前客席から観たドミニク・カルフーニのヴィヴェットが本当に素敵だった。感情表現を、自分だけのものをつくっていきたい」と話す。2日目のヴィヴェット役、川島は「女性ダンサーの、感情的な意味での役割はとても大きいと感じた。どう掘り下げ、どう打ち破っていけるかが課題」という。彼女と組むのは柄本。数年前、ボニーノは彼に「『アルルの女』をやるといい」と声をかけたことがあるという。それがついに実現、「体力的にハードな作品と痛感。内側からストーリーを語れるようになりたい」と柄本も意欲的だ。

〈20世紀の傑作バレエ〉公演は、9月8日、(金)から10日(土)まで、東京・東京文化会館にて。チケットは5月27日(土)午前10時より発売。

取材・文:加藤智子